【雑想ノート】「就活」というもの #就活

以前、「【雑想ノート】やりたいこととやれることとやってきたことについての雑想 | Crazy One – glad design blog –」という記事で、
“ここ数年は、細かくは書けないのだが、とある公共事業に携わっていて、徐々に仕事の比率が変わっていった。
そこでは、基本的には「教える」仕事をやってきた。”
と書いた。

もちろん、今後も細かくは書けないのだが、興味関心分野については書いておこうと思う。

「教育」と「就活」

大きくは「教育」というカテゴリーでの仕事ではあるが、それこそ幅広すぎる分野でもあるので、そこはそのうちつらつらと書くこともあるだろう。
ひとまず、比較的わかりやすいものとして「就活」について、ちょっと書いてみたい。

最近の就活事情

身近に大学生がいるとか、会社で人事部の仕事をしている人以外には、あまり関心が高いとは言えないキーワードかもしれない「就活」。

しかし、この現象、現実を知っておかないと、様々なところに問題が波及してしまう、いや、もうしていると言ってもいい状況、なのだ。

2015年の最大のトピックは、「就活後ろ倒し」である

「就活」が「後ろ倒し」である。
知らない人にとっては、なんのことだか・・・。奇妙な日本語である。
ここ最近の就活では、大学3年生の11月あたりから始め、早い人では4年生の春ごろ、4月には内定をもらっている、というのがおおよその「スタンダード」であった。もちろん、なかなか決まらず苦労する学生も多数存在はする。
しかし、国の方針として「学生は学問に励むべし。就活で勉強が疎かになるのはまかりならん!」ということで、経団連に「新卒採用は3年生の3月から、採用の選考開始(事実上の内定解禁)は4年生の8月から」としてくれと。経団連はこれを受けて「就活後ろ倒し」となったわけ。
この「就活後ろ倒しスケジュール」は2016年度卒業の学生から、ということで「16採用(いちろくさいよう)」とか「16問題(いちろくもんだい)」などと言われているようだ。

問題はどこにあるのか?

しかし、内定通知(の解禁)は変わらず4年生の10月からなので、企業側は8月から10月の2ヶ月間で選考(面接とか)し、内定を決めなければならず、厳しい状況。

とはいえ、経団連に加盟していない企業、とりわけ中小企業では、この後ろ倒しスケジュールを守る必要はなく(経団連加盟企業にも罰則などはない)、できるだけ早めに「優秀な人材」を確保したいということで採用活動を進めている。

中小企業にとっての就活後ろ倒しは?

では、中小企業にとってはデメリットなどなさそうではないか、と思うかもしれない。
ところがそうはいかない。

中小企業は早めに採用活動を進めて、早めに優秀な学生には内定を出している。

しかし、学生にとっては、大手企業が「本命」という人もいる。「本命」である大手企業からの内定は10月からなので、それまでに中小企業から内定をもらっていても、大企業から内定がもらえれば、そちらを選ぶだろう。
そうすると、早めに内定をもらっている中小企業へは「内定辞退」することになる。

そこで困るのは中小企業のほうである。
いまさら内定を辞退されると、全てが最初からやり直しである。それまでの採用活動が無駄に終わるだけでなく、次年度の採用計画にも影響が及ぶ。
しかも、中小企業の人材採用は、ごく少数の総務的な部署が他の仕事と掛け持ちをしながらやりくりしていたり、会社の規模によっては経営者自らが行っている場合すらある。
現実に、採用予定人数が10名なのに、半分以上から内定辞退をされた企業がいくつもあると聞いた。

しかも、そもそも中小企業では、採用活動を行おうにも、知名度が低い企業が多く、学生にエントリーしてもらうだけでもひと苦労なのだ。
(このあたりは就活ナビサイトの功罪として別途書きたい)

大企業にとっての就活後ろ倒しは?

大企業にとっても、影響がないわけではない。
採用活動から内定決定までの時間は短くなったので、より効率的に進めなければならなくなった。就活ナビサイトからの大量のエントリーを短い期間で捌く必要があるのだ。

大企業とはいえ、人事採用部門はそれほど人員が潤沢というわけではない。エントリーしてくる学生全員と面接をするわけにもいかない。
したがって、「採用」のための活動というよりも、「不採用」のために、大学名でエントリーを絞る「大学ターゲティング」(=足切りなどと呼ばれる)や、「リクルーター」を使っての、言わば「ステルス採用活動」とでもいうような動きをせざるを得ないのが、現状である。

リクルーターというのは、採用活動であることを伏せて学生と接触し、観察を行うことを指す。学生が企業のOBOG訪問を行う際に大学の先輩という建前で会うパターンが多いという。
大学の先輩として会いつつ、学生の本音や、面接などでは分からない部分を見ているらしい。

後ろ倒しは就活生にとってのメリットがあるのか?

就活後ろ倒しスケジュールは、就活生にとってはどういうものなのか?

結論から言うと、学生にとってはメリットはほぼ無いと思われる。
建前では「学業優先」という旗印はあるが、学業を優先するあまり、就活できず、結果的に就職が出来なかったとしても、誰かが責任をとってくれるわけではない。
大学の教授職としてはもちろん学業を優先してほしいという気持ちはあるだろう。
ただ、そもそもなぜ学生に勉強してほしいと思うのか。それは学生自身の人生をより豊かにするために学問が有益であることを、人生の先輩として知っているからに他ならない。
「勉強しておいたほうがいい」ということが分かっているからである。

しかし、就活スケジュールなどの大人側の都合で、結果的に学業も就職も逃してしまっては、元も子もないではないか。
後ろ倒しスケジュールによって、より厳しさを増した「就活」が、学生にとって、よいものであるとは、やはり思えないのである。

時間は元には戻せない

このように、大手企業にも中小企業にも学生にとっても、あまりにメリットのない「就活後ろ倒しスケジュール」であるが、運用されてまだ最初の年であるにもかかわらず、見直すという動きがあるらしい。
おそらく想定以上のクレームがいたるところから噴出したのだろう。
だが、やってみてダメならすぐに改善するという姿勢はよいと思う。

しかし、学生にとっては人生の大きなターニングポイントである就職に関して、だめだったから元に戻しますというのは、納得いかない部分も少なからずあるだろう。
時間は元には戻せないのである。

こうした学生自身に非がない要因で、いろんなことが起こっており、そのまま就職した学生は、理想と現実とのギャップに打ちのめされ、3年以内に3割が離職してしまう「就職のミスマッチ」を引き起こしている。
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就活の混乱が引き起こす、その影響は?

こうした就活の混乱とも言うべき事態は、ここ数年で広く報道されるようになってきた。
とはいえ、、冒頭で述べたように、身近に大学生がいない人にとっては、現実味がない、というのが正直なところだろう。

しかし、この就活の混乱は、さまざまな領域に影響を及ぼすのである。

まず、就職のミスマッチが続いていくと、どうなるか。
3年以内に3割が離職する、という現実がある。
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離職した人は次の職に就くために、転職サイトや情報誌にコストをかけて次の仕事先を見つけなくてはならない。
運良く転職できたとしても、前職よりも高待遇というパターンはそう多くないだろう。なにしろ、3年経たずして辞めてしまっているのである。それも、目的があって辞めた訳ではない場合、ほとんどは良い印象は得られないだろう。

こうして、キャリアアップの転職ではなく、だんだんと条件が悪化する負の転職ループに陥る場合もあるだろう。

そもそも、若い人の人口(若年者人口)自体がこの先減り続けることは自明である。つまり、労働力人口も減り続けるわけだ。
労働力人口が減れば、生産量は下がるだろう。生産量が下がるということは、経済力が下がる、国力が下がる、ということである。

これははたして、他人事なのだろうか?
自分の身に降りかかってくる、大きな現実ではないか。

「就活」という切り口では、ほとんどの人にとっては、他人事なのだとは思う。
しかしながら、ちょっと考えれば、決して他人事ではない、と言える。

なお、就活界隈の情報としては、最近はさまざまな書籍が出版されている。

こちらは少し古いが、おおよその傾向を知る上では参考になる。

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こちらはより現状に近い情報がある。
スケジュール後ろ倒しについてが、ズバリタイトルにも。

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