【BOOK】『強く生きるノート』lecture 2-2 わかりあえないことから、はじめよう(平田オリザ)

強く生きるノート 考え方しだいで世界は変わる (KEIO MCC Intelligence Series)
本田 直之 ちきりん 小池 龍之介 平田 オリザ 竹中 平蔵 原田 泳幸 村上 憲郎
講談社
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複数の著者によるオムニバス形式のビジネス書。
どうやって生きるか、の前にどう考えるかのヒントを、多様な視点で切り取ったものになっています。
【BOOK】『強く生きるノート』lecture 1-1 常識という名の「7つの制約」に縛られない生き方(本田直之)
【BOOK】『強く生きるノート』lecture 1-2 「自分のアタマ」で考えるために(ちきりん)
【BOOK】『強く生きるノート』lecture 2-1 感情をコントロールする方法(小池龍之介)Rawpixel com 593602 unsplash

lecture 2 「心」とどう付き合うか

1-2 平田オリザ 氏(劇作家・演出家)

わかりあえないことから、はじめよう

まず、相手の気持ちを受け止める

「ビジネスシーンでは何よりもコミュニケーションが大切だ」
「グローバルな時代、コミュニケーション力のある人材がほしい」
などと言われる。

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経団連の調査で企業が採用時に重視する項目として「コミュニケーション能力」が15年連続で1位となっている。
[link]2017 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果 – 日本経済団体連合会

「コミュニケーション力が大切だ」というのは、
たしかに誰もがそう感じてはいるが、
そもそも「コミュニケーションとは何か」という問いに
どれほどの人が明瞭に答えられるだろうか。

平田オリザ氏は「対話」が大切だと説く。

内外からの国際化や、価値観や生き方の多様化で、日本人には、新しいコミュニケーション能力が必要とされています。今後、あなたの家や学校、職場にも、働き方や志向、ライフスタイルが全く異なる人々が年々増えていくと<察し合う><空気を読む>だけではなく、価値観が異なる人とお互いの差異をすりあわせる<対話>というコミュニケーション作法が必要になってきます。

「対話」をさらに分解する。

コミュニケーションとは、そもそも「相手の気持ちを受けとめる」ことが第一歩です。

子どもが帰ってきて学校の話しをする例、
病院での看護師が「オウム返し」をするの例、
ホスピスでの医師が患者の家族にかける言葉の例を通して、

いいコミュニケーションとは、まず相手の言葉の文脈を読み取って、それを受け止めているよと伝えることです。

と示している。

「まずは相手の言葉を受け止める」というのは、
理屈としては理解できる。
自分が充分にできているとはまだまだ思えないが・・・。
会話がキャッチボールだというならば、まずはボールを受け取らないと、
相手に投げ返すこともできない。
受け止めないでこちらの言い分だけを言うならば、
キャッチボールではなく、ただボールを打ち返すことと同じなのだ。

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説明しあう力(対話力)を身につける

日本で生まれ育った者同士であれば、
どうにかして「折り合いをつける」ということはなんとかできそうなイメージがある。
実際には学校や夫婦関係など、難しい面も多々あるが、
それでも外国人とのコミュニケーションを考えると、
途端に難しさのレベルが違う印象を持つ人も多いだろう。

平田氏は日本人同士のコミュニケーション文化を
「察しあう文化=気遣う文化」
と呼び、欧米でのコミュニケーション文化を
「説明しあう文化」であるという。
そして、世界のマジョリティは圧倒的に後者「説明しあう文化」である。

これには国としての歴史が背景にある。

自分が相手にとって安全な人間(「私はあなたに敵意をもっていません。あなたと理解しようとしています」)だというのを、自分から示さなくてはいけない風土が残っている地域では、「説明しあう文化」が強くあります。人種や民族が違うと、自分は何者か、わざわざ言葉にして説明しあわないと緊張感が増してしまうからです。

日本のように長い間、ほぼひとつの民族同士で国を作ってきた場合、わざわざ説明しなくても、ある程度、相手のことが分かったり、こういうことかなと察することで、うまく共同体を運営できていた。

しかし、今後、人口が減っていく日本社会において、外国の方など異なる文化背景を持つ人と円滑にコミュニケーションを図るには、「説明しあう力=対話力」が重要になってくるのだ。

欧米への旅行で食事をするときにはナイフとフォークで食べるように、相手のルールにあわせることで初めて同じ土俵に上がれる。
そんなときに「いや、自分はそんなルールはいやだ」というのなら、そもそもコミュニケーションは成立しない。海外旅行などしなければいい。

コミュニケーションにおける注意点、とも言える部分にも踏み込んでいる。

対話とは、具体的にどのようにおこなうのでしょうか?
「察してもらおう」「わかってもらおう」とするのではなく、「共感ポイント」をつつくのがコツです。

これは非常に重要なポイントだろうと思われる。
とかく、よいコミュニケーションをとろうとすると、「わかってもらおう」としてしまいがち。
相手にも「わかってもらう」ことを求めたりすることが多いが、
そうすると結果的に「わかってもらう」ことができないと、
「どうしてわかってくれないのか」という出口の見えない悩みに陥ることになる。

演劇の世界でも「共感ポイントをさぐる」という指導が行われているという。
役になりきる=登場人物に憑依する、というイメージをもたれがちだが、実際はそうではなく、役柄の性格と自分自身の性格との「共有できるポイント」を探り、役柄を「理解しようとする」のだ。

これは教育先進国フィンランドでも授業で導入されている手法だという。

教科書の書く単元の最後には、「今日読んだ物語の続きを、みんなで話し合って演劇にしよう」とか「今日話し合ったことを、グループをつくってラジオドラマにしてみよう」と共同でひとつのアウトプットをつくる課題が課されています。
演劇は、他人を装う疑似体験です。だから「他人との共感ポイントを探す」練習にとても有効です。

その前提には、「みんな違って当然」という文化的背景がある。
生まれも言葉も価値観もバラバラな人間が共同体を形成するには、
なによりも「対話」が重要である、ということの証なのである。

[link]演劇を授業に導入するヒント
[link]演劇的手法を用いた授業実践の教育的有効性を認識するための予備的研究

Rawpixel com 584292 unsplash

他人との「差異」をすりあわせ、ときには自分が変わっていくことに喜びさえ見出す

異なる価値観や文化を持った人が話しあった結果、自分が変わっていくことを潔しとする。あるいは自分が変わっていくことに喜びさえ見出す。
これが説明しあう力<対話力>の基本的な考え方だからです。

ここで平田氏は「対話」と「対論(討論・ディベート)」との違いで説明している。
ディベートはAとBの意見の戦いであり、結果はAかBのどちらかとなる。
対話ではAとBとの議論の末にCという概念が生まれることもあるが、AもBも変わっていくこと自体に恥ずかしさはないのだ、という。
こうした、自分の意見が変わっていくことを繰り返しながら、変わること自体に喜びを見出し、楽しみながらコミュニケーションを重ねることが、コミュニケーション能力が高い日本人をつくる方法だ、と述べている。
この最後のポイントは、まだまだ難度が高すぎるだろう。
東京オリンピック2020があっても、急激に日本人が変わる、ということはなさそうである。
とはいえ、まずは「相手の気持ちを受け止める」ことから、できることから少しずつでよい、ということで。

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