【TV】NHKスペシャル『中流危機を越えて』-もう遅いかも


NHKスペシャル“中流危機”を越えて「第2回 賃金アップの処方せん」 – NHKプラスを見ての感想メモ。
知人がちらっと映る、ということで何の気なしに見てみたところ、内容も興味深かったので慌てて音声入力でメモをとった。

賃金アップに繋がる成長産業を生むため、社員の学び直し“リスキリング”に挑む日本企業や、パートタイマーの管理職登用など正社員と非正規雇用の格差縮小に努める小売業大手の最新の動き。ドイツは国を挙げた取り組みで、自動車工場を解雇された労働者がIT企業に転職し、新たな収入を確保。オランダは労働者の半数近くいるパートタイムが、正社員と同等の時間給や手当を手にし、女性の社会進出も進む。賃金アップのカギは!?

引用元:“中流危機”を越えて 「第2回 賃金アップの処方せん」 – NHKスペシャル – NHK

まず「中流危機」と言う言葉からくる違和感がある。
中流では無い=良くないことと言う前提があるのか。
リスキリング、スキルの再取得がテーマなのか、賃金アップがテーマなのかよくわからない。あ、両方なのか。

派遣社員等の非正規雇用で働く人たちが管理職への登用とあるが、ほとんどの非正規雇用の人たちはそれを望んでいないのではないか。

海外での取り組み、プログラミングを学び、再就職したと言う例や、パートタイム経済の事例等、非常に合理的だと感じる。

従来のスキルをより高めることをスキルアップ、これから必要とされる、今までとは違った事業領域のスキルを学ぶことをリスキリングと定義している。
ただ思うのは、このリスキリングが必要になる背景には、日本の雇用環境があると思う。
日本では多くの企業がメンバーシップ型の採用を行っている。入社してから、どんな仕事に就くかは後から会社が決める。入社した社員はメンバーシップなので、どんな仕事もやらないといけない。
欧米の多くの国では、ジョブ型の採用を行っている。入社する前にどんな仕事をするのかがあらかじめ決まっている。そのジョブによって給料が規定されている。
日本では一旦雇用すると、会社側から一方的に解雇することができないという事情がある。だから、どうしてもメンバーシップ型にならざるを得ない。一旦採用した人をどのように活用するか、会社側が模索しないといけない。そのため、リスキリングと言う考え方が進んでいくのではないか。

イタリアでの実証実験。公共交通機関を複数またいで利用し、後でまとめて自動で精算するソリューション。電車に乗る時も、バスに乗る時も、乗り換えるたびに切符を買う等の手続きが不要らしい。
これってスマホの電源を切っていたらどうなるんだろう?
バスに乗るとアプリが自動起動する…日立の「世界初の運賃システム」がイタリアで大成功したワケ 「まったくのハンズフリー」で公共交通を使える | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

AIがお勧めするスキルを人間が習得する、と言う違和感。もうAIにやってもらえばよいのでは?

ドイツの事例。
様々なデジタル製品やソリューションを生み出しているが、それを支えるデジタル基盤、OSのようなベースとなる部分から母国語やそれに近い英語などで構築されている。こういった言語の違いからくる環境の差と言うのは意外と大きいと思う。それだけに日本生まれのOS (TRON)が成長しなかったのは残念だと思う。
TRONプロジェクト – Wikipedia
Windowsよりも先進的だった国産OS「TRON(トロン)」 – 株式会社ライトコード
革新的だった国産OS「TRON」の普及を妨げた通産省とマスメディアの横槍。健全な業界発展を阻害したのは誰か?【連載】サム古川のインターネットの歴史教科書(4)|FINDERS

新しいことを学ぶ時、年齢や性別に関係なく、照れや気負いもなく学んでいこうとする姿勢がとても大切。やってみないとわからないけど、挑戦してみようと言える姿勢。日本人はこういった点でとても損をしていると思う。と同時に、こういった姿勢はある程度若くないと非常に難しいとも思う。つくづく経済はマインドだと思う。
成長戦略の成功に不可欠な経済マインド向上 カギは経済教育  Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン)
消費は人々のマインドが左右する|加谷珪一『国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶』レビュー(本がすき。) – Yahoo!ニュース

ドイツは、国を挙げて製造業を大改革した。従来の産業から成長産業への労働移動、日本はこれを少なくとも20年前にはやるべきだったのではないか。
現在の日本政府を見ていると、とてもではないが期待できない。デジタルのデの字も知らないような老人たちに改革などできないだろう。

日本の中小企業では、リスキリングの概念が浸透していない、とあったが、その前にそんなことを考える余裕がないと言うことだろう。
国は「新しい資本主義」として、副業や兼業を推進とあるが、一方で、インボイス制度等、副業をやろうとするマインドを低下させる動きをしている。
「新しい資本主義」に欠落するもの 第9回 消費税インボイスを企業経営に生かせ(森信茂樹) – 個人 – Yahoo!ニュース
インボイス制度導入がやばいといわれる理由|問題点と対策を徹底解説

非正規雇用の待遇アップ。イトーヨーカドーの事例。
非正規雇用の待遇がどんどんと上がっていき、管理職にも登用され、管理職としての手当てもあり、福利厚生も正社員とほぼ同じ、となると正社員と何が違うのだろうか?
ヨーカ堂「正社員半減」の挑戦 パートに託す命運: 日本経済新聞

仕入れや販売方針等本部が決めて、トップダウンで行うやり方から店舗主導、現場主導での販売戦略に切り替えたとあった。こうしたトップダウン型の運営管理または従業員管理の上位下達のやり方というのは、やはり昭和の時代から連綿と続いてきた学校教育に根ざしたものであると思う。その学校教育も元をたどれば、軍隊の教育方法に行き着く。結局のところ、富国強兵の時代から根っこが変わっていなかったのだ。

経営者の仕事と言うのは、人件費を削り、固定費を削り会社を維持することではなく、雇用を守るためにいかに売り上げを伸ばすか、それを考えるのが経営者の仕事である。まさしくそう。毎日数字だけを追いかけていると、そういったことに気づけなくなる。

オランダでの事例。
パートタイムであっても正規雇用。
フルタイムとの違いは、労働時間だけ、完全な同一労働同一賃金を実現しているとあった。
これを実現するには、例えば全員がパートタイムであっても、仕事が回るような仕組み作りが必要だろう。また、全員がパートタイムの場合、その分多くの人を雇う必要がある。それでもきちんと売り上げがあって、利益を出せるような運営ができるかどうか。
現実的に考えて、現状の日本の中小企業ではほとんどが無理だろう。
やはりオランダでも待遇改善のきっかけは労働組合が動いたことだ。こうした動きは、お国柄というか、民族の意識の違いもあると思う。自分たちの権利は、自分たちで勝ち取るという意識があるかないか。日本は古来からお上の言うことに従うという思考停止文化が根強い。
【働き方改革事例】オランダの理想的なワークライフバランス

結局のところ、賃金を決める基準が「労働時間」と言う尺度になっているので、労働時間が長いほど給料が良くなるという仕組みになっている。そうするとより稼ぐためにはより長く働くというマインドにつながる。それが延々と続くといつまでも仕事を続けることになり、余暇の時間が削られ、幸せを感じることができなくなっていく。そういう負のスパイラルに陥っているのが日本の現状だろう。

最後のパネリストの言葉、今後どういったことが必要かと言う問いに対する回答として、「成長戦略の民主化」とあった。結局のところ、政治がだらしないので、民間企業がいくら頑張っても改善できないと言う現状があると思う。思い切って法律を変え、ドラスティックに改革していかないといけないというのに、政治が全く機能していない。
もうこの際、政治が国の方針をこうしようああしようと言うのではなく、民間企業がスピード感を持って改革を進め、政治はそれをサポートするという体制にしなければ、もはや何も進まないだろう。

「小さな政府」と言う言葉があるが、
中学校社会 公民/「大きな政府」と「小さな政府」 – Wikibooks
それを実現するためには、まず議員の数を減らし、仕組み化・自動化できるところはどんどんとIT化を進め、効率よく運営できるようにしなければならない。IT化を進めるためには、まずはITリテラシーを学ぶことから始めなくてはならない。結局のところやはり教育が大事だと言う結論になる。

問題なのは、そういったITリテラシーを教えることができる人材が不足していると言う点である。
失われた30年とか氷河期世代と言う言葉がある。その先頭の世代、現在の50歳前後の年齢層が世代別人口で言うと最も多い。その世代を中心にIT教育を施していれば、30年経った現在、それらの人たちがITリテラシーを教える立場になっていたはずだ。当時の、バブル崩壊後の政治決断の遅さ、企業の雇用維持のために新卒採用を控えた判断が現在の閉塞感を生んだ元凶なのだ。

それを打開するためにはリスキリングが必要だというのが番組の趣旨なのだろうが、もう遅いよなという感想は払拭できなかった。

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