【MOVIE】『シン・ウルトラマン』自己犠牲と人類讃歌と愛を教えてくれるヒーローの物語

自己犠牲と人類讃歌と愛

この映画を一言で言うならば「自己犠牲と人類讃歌と愛の物語」だと私は思った。

映画『シン・ウルトラマン』予告【2022年5月13日(金)公開】


ネットの考察記事などを読むと、ウルトラマンが題材なのにヒーローらしくないと言う見解が意外と多くあった。
私はそうは思わなかった。これは紛れもなくヒーローの映画であった。
もう少し厳密に言えば、現代における、今という時代に必要とされる真の(シンの)ヒーローの物語だと思った。

ネタバレ注意

光の国から来たウルトラマン(最後の場面でリピアと呼ばれている)は、ネロンガとの戦闘において、逃げ遅れた子供を助けようとして自分の命を投げ打った禍特隊の神永隊員の「自己犠牲」の行動を見て、彼の体と命を自分の命と融合させた。
光の国に暮らすウルトラマンたちの種族から見ると、自分の命と引き換えに、誰かの命を守ると言う行動は、価値観としてありえないとまでは言わないまでも、それに値するとまではあまり考えられていないらしい。
だからこそ、最後の場面で、ゾーフィがウルトラマンを説得する際に、あの名台詞が出てきたのだ。

「ウルトラマン、そんなに人間が好きになったのか」

(このセリフを、あの庵野さんが脚本として書いた、ということが裏の感動ポイントでもある)
(#私の好きな言葉です)

地球人類は、宇宙から来た外星人から見れば、とても小さな存在であり、だからこそ、周りの仲間を信じて、助け合って困難を乗り越えていく存在だ。
長澤まさみ演じる浅見隊員が神永にコーヒーを持って来るくらいの気を利かせてと言うシーンで、そういったセリフがある。

「世の中は個人だけで構成されていない。あなたのコーヒーも着ている服も、見知らぬ誰かのおかげなの。人は誰かのお世話になり続けて生きている社会性の動物なのよ」

若い人にはピンとこないセリフかもしれないが、これは人間社会の真実の一面を言い表している。

そして神永の体に入ったウルトラマンは、禍特隊のメンバーをどう呼べばいいのかと浅見に聞いている。人間の思考表現としてどう呼べばよいのかと聞かれて浅見は「仲間」と答えた。
ウルトラマンはこの時「それが[群]か」と表現した。

破壊兵器ゼットンを倒すための方法を探る際、ウルトラマン自身がβシステムを与えるのではなく、禍特隊メンバーにβシステムの基本原理を記したUSBメモリーを託し、人類が自分たちの手で解析する、と言う方法を選んだ。
これは「群」として生きていく地球人類を「仲間」として信じたという行動の表れだろう。
さらに言うならば、最終的にゾーフィによって光の国へ強制送還されそうになった時、ウルトラマンは神永の命を残すことをゾーフィに頼んでいる。
宇宙警備隊隊長であるゾーフィはそれはできないと突っぱねるが、ウルトラマンは自らの命と引き換えにしてもいいという。
地球人から学んだ「自己犠牲」を実践するのだ。
その行動は紛れもなく「愛」と言わずして何と言うのだ。

中間の存在

ウルトラマンは、地球人類と外星人(宇宙人)との中間の存在であるとウルトラマン本人も言っていた。
この、「どちらにも完全に属さない存在」というのは、他にも様々な関係性を暗喩しているのだろう。
日本とそれ以外の国とのハーフなどは典型的な例だ。
そして、どちらか一方だけの視点ではなく、またどちらからだけの視点でもなく、どちらにも属さないという中間の存在の視点から見えてくるものがあるというセリフもある。
(私もAという会社に属しながら、Bという会社で仕事をしている、似たような立ち位置にあるため、より強くそう思う)

これを国と国との関係に置き換えて考えることもできるだろう。
例えば、ロシアとウクライナとの戦争においても、ロシアにはロシアの正義、ウクライナにはウクライナの正義があり、どちらも正義を振りかざし対立している。
しかし、第三者の目線で見たとき、どちらか一方だけが正しいとは、必ずしも言い切れない、という事はよくわかるだろう(日本はNATO側・アメリカに守ってもらっている国なのでNATO側が正しいという論理で展開された情報しか流れないので理解しにくくなっているが)。


そのほか、「ウルトラQのあの渦巻きから始まるオープニング(怪獣着ぐるみの使い回しのリスペクトも)」とか、「人類の国家内・国家間での駆け引きの滑稽さ(やっぱり判子出てきた)」とか「カラータイマーが無いけど体の色そのものが変わるのか」とか「ゼットンは破壊兵器という[システム]だったのか」とか「あの助けられた子どもが大きくなって続編が作られたらいいなあ(新シンウルトラマン)」「シン・ゴジラに出てきた俳優がたくさん出ている、庵野秀明ワールドのシステム」とか、色々と思うところがたくさんあるが、総じてとても良い映画だった。


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