【BOOK】2022年に読んだ本 21冊ふりかえり

woman sitting on bed while holding book
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2022年はたくさんの小説を読んだ。
感想文もたくさん書いた。
読んだ本すべてを感想文にしたわけではないが、ひとまずこの1年に読んだ本をまとめておこうと思う。

1.『ギフテッド』 山田宗樹:著


ギフテッド (幻冬舎文庫) | 山田 宗樹 |本 | 通販 | Amazonより引用:

ある少年の体内で見つかった未知の臓器。以後、世界中で発見され、彼らはギフテッドと呼ばれる。当初、何の特徴も表れなかったが、彼らを恐れた人間ばかりが肉片と化す事件が起き、人々の心に恐怖が宿り始める。差別か、共存か。自分と異なる者に直面した時、人はどんな残酷な決断を下すのか? 人間の限界と本性が暴かれる、エンターテインメント大作。

偶然、タイトルに惹かれて何の気なしに読んでみたら見事にハマってしまった1冊。
特殊な設定のSF、しかも超能力というところで、好みが分かれるカテゴリーなのかもしれないが、私はそれほど抵抗なく読めた。
著者の山田宗樹さんの他の代表作、『百年法』も読んだ。
こちらも感想文を書いた。


2.『どんまい』重松清:著


どんまい (講談社文庫) | 重松 清 |本 | 通販 | Amazonより引用:

苦労(ピンチ)のあとこそ、チャンスだ!

家族と、仲間と、野球が好きだからーー。
合言葉は、「だいじょうぶ! どんまい(Don’t Mind!)!」

草野球に、人生の縮図あり!
白球と汗と涙の長編小説。

「わたし、水原勇気になりたかったの」ーー離婚後のリスタートで、娘の香織を連れて草野球を始めたアラフォーの洋子だが、やはり現実は厳しい。迎えるチームの面々も、介護や子育てに悩み、リストラに怯え、いじめに傷ついて……。でも、合言葉は「どんまい!」。野球愛と人生への熱いエールに満ちた長編小説。

敬愛してやまない重松清さんの著作。
カープ、草野球がテーマであれば、読まないという選択肢はない。
ただ、一気読み、というわけにはいかない。
なぜなら涙で文字が霞んでしまうから。
登場人物一人一人の、ひとつひとつのセリフが、美しく、せつない。
それも広島弁だから。もう、ずるい。
心臓のちょっと下のあたりの動脈か静脈かわからないところを、親指と人差し指の第二関節あたりでキュウっと絞られているような感じ(伝われ)。
自分で書いた感想文を読み返すだけで泣けてくる(馬鹿なのか)。


3.『俺達の日常にはバッセンが足りない』三羽省吾:著


俺達の日常にはバッセンが足りない | 三羽 省吾 |本 | 通販 | Amazonより引用:

「俺達の日常にはバッセンが足りない」ある日、シンジの幼馴染のエージが突然言った。

バッセン――バッティングセンターなんかつくってどうするんだと聞くシンジに、エージは「ないから作ろうかなって」と言うだけ。
金策のため旧友のミナに連絡をとるシンジ。
そのころ、信用金庫に勤めるミナは、ある問題を抱えていて……。

皆で盛り上がったり憂さを晴らしたり、〝なくてもいいけどあった方が良い〟バッセンの建設を巡る、
悩み、もがき、あがいて生きている人間たちの群像。

野球繋がりか、タイトル一本釣り。
日常にバッセンが足りていないとは、いったいどういうことだ?
という微妙なうまいところをついてくる。
若者の、モラトリアムな何とも言えない空気感を描いた良作。


4.『夜がどれほど暗くても』中山七里:著


夜がどれほど暗くても (ハルキ文庫) | 中山七里 |本 | 通販 | Amazonより引用:

志賀倫成(しがみちなり)は、大手出版社の雑誌『週刊春潮』の副編集長で、その売上は会社の大黒柱だった。
志賀は、スキャンダル記事こそが他の部門も支えているという自負を持ち、充実した編集者生活を送っていた。
だが大学生の息子・健輔(けんすけ)が、ストーカー殺人を犯した上で自殺したという疑いがかかったことで、
幸福だった生活は崩れ去る。スキャンダルを追う立場から追われる立場に転落、社の問題雑誌である『春潮48』へと左遷。
取材対象のみならず同僚からも罵倒される日々に精神をすりつぶしていく。
一人生き残った被害者の娘・奈々美から襲われ、妻も家出してしまった。
奈々美と触れ合ううちに、新たな光が見え始めるのだが……。

これもタイトル買いだが、あらすじだけでもう面白そう感が半端ない。
著作がかなり多作な方なので、全ての著作を読むことはできないような気もするが、他にも読みたい作品がたくさんある。
ちなみに中山七里さんはこんな方。すごい。


5.『スクラップ・アンド・ビルド』羽田圭介:著


スクラップ・アンド・ビルド | 羽田 圭介 |本 | 通販 | Amazonより引用:

第153回芥川賞受賞作

「早う死にたか」
毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、
ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。

日々の筋トレ、転職活動。
肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して……。
閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生!

感想文を書きながら、何をスクラップして何をビルドしたのか、がストンと整理された。
テレビなどで見かける著者のイメージとはかなりかけ離れた内容ではあったが、無駄を削ぎ落としたような、ストイックな作品だと感じた。
たまに著者のYoutubeチャンネルを見るのだが、小説に関する内容の回は非常にクレバーな方だと思わされる。
一方で小説とは関係ない話題の回はびっくりするほど面白くない。


6.『イノセントデイズ』早見和真:著


イノセント・デイズ (新潮文庫) | 和真, 早見 |本 | 通販 | Amazonより引用:

正義は一つじゃないかもしれないけど、真実は一つしかないはずです

放火殺人で死刑を宣告された田中幸乃。彼女が抱え続けた、あまりにも哀しい真実――極限の孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。

田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪により、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人など彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がるマスコミ報道の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士は再審を求めて奔走するが、彼女は……筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。

衝撃作。そして、何しろ重い。重たすぎるストーリー。
重いが、いや、重すぎるが故になのか、純粋すぎる。
読む前と読んだ後では、世界の見え方が違う、といっても言い過ぎではない。


7.『不発弾』相場英雄:著


不発弾 (新潮文庫) | 英雄, 相場 |本 | 通販 | Amazonより引用:

大手電機企業が発表した巨額の「不適切会計」。捜査二課の小堀秀明は、背後に一人の金融コンサルタントの存在を掴む。男の名は、古賀遼。貧しい炭鉱街の暮らしから妹を救うため、体力頼みの場立ち要員として証券会社に就職。狂乱のバブルを己の才覚のみでのし上がった古賀は、ある事件をきっかけに復讐を始めるのだった──。欲望に踊らされた男たちの終わらない闘いを描く経済サスペンス。

誰しも、人生が順風満帆ではない。
心の中に、「不発弾」を抱えたまま、頑張って生きているのである。
そうした、苦悩と葛藤を二人の人物の半生を通して描ききった良作。


8.『傲慢と善良』辻村深月:著


傲慢と善良 | 辻村深月 |本 | 通販 | Amazonより引用:

婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。
その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。
生きていく痛みと苦しさ。その先にあるはずの幸せ──。
2018年本屋大賞『かがみの孤城』の著者が贈る、圧倒的な”恋愛”小説。

「人を好きになるってなんなんだろう」
「読み終わったあと、胸に迫るものがあった」
「生きていく中でのあらゆる悩みに答えてくれるような物語」

「この小説で時に自分を見失い、葛藤しながら、何かを選び取ろうとする真実と架と共に私たちもまた、地続きの自由へと一歩を踏み出すのだ」
       ――鳥飼茜さん(漫画家)

絶賛の声、続々。

物事はある一面から見れば善良な行いに見えることもあれば、違う一面からは傲慢に映ることもある。
心のひだの裏側をそっと捲るような著者の作品には、繊細な柔らかさと同時に、よく研がれた鋭利な刃物のような冷たさもある。
今年、文庫化もされたようだ。


9.『雨に消えた向日葵』吉川英梨:著


雨に消えた向日葵 | 吉川 英梨 |本 | 通販 | Amazonより引用:

埼玉県坂戸市で小学五年の石岡葵が失踪した。最後に目撃されたのは豪雨の中をひとりで歩く姿。現場には傘一本しか残されていなかった。誘拐か、家出か、事故か。葵が一か月前に同じ場所で男につきまとわれたという姉の供述を受け、県警捜査一課の奈良健市も坂戸市に急行した。二転三転する証言、電車内で発見された葵の私物、少女に目を付けていたという中学生グループ……。情報が錯綜し、家族が激しく焦燥に駆られるなか、執念の捜査で真相に迫っていく。

ブログ記事冒頭でも書いたが、娘を持つ父親の立場でしか読めなかった。
読み進めることがものすごい恐怖であった。
小説としては非常に面白かったのだが、しばらくは読み返せない。
もう、あんな恐怖体験はしたくない。


10.『爆弾』呉勝浩:著


爆弾 | 呉 勝浩 |本 | 通販 | Amazonより引用:

東京、炎上。正義は、守れるのか。

些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。
たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。
直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。
「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。
警察は爆発を止めることができるのか。
爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。

驚異の2冠! 呉勝浩『爆弾』が日本最大級のミステリランキング2つで1位に!|株式会社講談社のプレスリリース
今年、圧倒的にウケたミステリーとして『このミステリーがすごい!』(宝島社)『ミステリが読みたい!』(早川書房)の2つのランキングで1位を獲得。
確かにすごい。
ハラハラドキドキを今年一番味わえた作品であろう。


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11.『宝島 HERO’s ISLAND』真藤順丈:著


宝島 | 真藤 順丈 |本 | 通販 | Amazonより引用:

◆祝!3冠達成★第9回山田風太郎賞&160回直木賞受賞!&第5回沖縄書店大賞受賞!◆希望を祈るな。立ち上がり、掴み取れ。愛は囁くな。大声で叫び、歌い上げろ。信じよう。仲間との絆を、美しい海を、熱を、人間の力を。【あらすじ】英雄を失った島に新たな魂が立ち上がる。固い絆で結ばれた三人の幼馴染みーーグスク、レイ、ヤマコ。生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり、同じ夢に向かった。

私が個人的に、今年1番読みたかった小説であり、読むべき小説であり、読んで良かったと思った小説である。
2022年は沖縄が本土復帰を果たした1972年からちょうど50年の節目の年に当たり、私自身も50歳という節目の歳でもあった。
この偶然をそのまま偶然と捉えるか、奇跡と捉えるか、私は後者と感じたのだ。
かなりの長編ではある上、沖縄言葉が頻出するので、読みやすいとは言い難い。
ただ、そうした表現があったからこそ、この物語の豊かさや深みが出たのだと思う。


12.『百年法』山田宗樹:著


百年法 (上) (角川文庫) | 山田 宗樹 |本 | 通販 | Amazonより引用:

不老不死が実現した日本。しかし、法律により百年後に死ななければならない――西暦2048年。百年の生と引き替えに、不老処置を受けた人々の100年目の死の強制が目前に迫っていた。その時人々の選択は――!?

『ギフテッド』で感想文を書いた、同じ山田宗樹さんの代表作(といってもいいだろう)。
上下巻の大長編である。
もし、不老不死を実現した社会になったら、人間はどうなるのか、人生とはどういう意味を持つのか、人はどう「生きる」のか、を問う問題作でもある。
SF設定なのでハマるかハマらないか分かれるところだが、個人的にはかなりハマった。


13.『#真相をお話しします』結城真一郎:著


#真相をお話しします | 結城 真一郎 |本 | 通販 | Amazonより引用:

私たちの日常に潜む小さな”歪み”、
あなたは見抜くことができるか。

家庭教師の派遣サービス業に従事する大学生が、とある家族の異変に気がついて……(「惨者面談」)。不妊に悩む夫婦がようやく授かった我が子。しかしそこへ「あなたの精子提供によって生まれた子供です」と名乗る別の〈娘〉が現れたことから予想外の真実が明らかになる(「パンドラ」)。子供が4人しかいない島で、僕らはiPhoneを手に入れ「ゆーちゅーばー」になることにした。でも、ある事件を境に島のひとびとがやけによそよそしくなっていって……(「#拡散希望」)など、昨年「#拡散希望」が第74回日本推理作家協会賞を受賞。そして今年、第22回本格ミステリ大賞にノミネートされるなど、いま話題沸騰中の著者による、現代日本の〈いま〉とミステリの技巧が見事に融合した珠玉の5篇を収録。

読み応え、という意味ではなく、ええっ!? と驚かされるために読むのが正しい気がする。
帯にある有栖川有栖(作家)先生のコメント『「騙されて驚くためにミステリを読む」という読者に格好の贈り物』が本作を表現する最高の言葉、というのは本当に秀逸な表現。


14.『ガーディアン』薬丸岳:著


ガーディアン (講談社文庫) | 薬丸 岳 |本 | 通販 | Amazonより引用:

「ようこそ。これであなたはガーディアンの一員です。学校でのあなたの身の安全は保証されます」。教師や親にはその存在を明かしてはならない、生徒による中学の「自警団」、ガーディアン。問題ある生徒に制裁を加え学校の平和を保つ。荒れた学校が一転、平和になった陰には、不登校をしいられる生徒たちがいた。新任教師、秋葉は不登校の生徒の謎を探るうち、その存在に気付くが……。少年犯罪を描いてきた著者の学校ミステリー。

学校もののミステリーはあまり読まないが、謎を知りたくてついつい先を読んでしまう。
ただ登場人物が非常に多かった。
名前のある生徒が多数出てきて、メモをとっていなかったら分からないまま進んでいただろう。


15.『カラスの親指』道尾秀介:著


カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫) | 道尾 秀介 |本 | 通販 | Amazonより引用:

人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。「他人同士」の奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは? 息もつかせぬ驚愕の逆転劇、そして感動の結末。道尾秀介の真骨頂がここに! 最初の直木賞ノミネート作品、第62回日本推理作家協会賞受賞作品。

満を持して道尾秀介作品である。
究極のどんでん返しを味わいたいなら本作品は間違いのないチョイスだ。
しかし、こういった作品は楽しいのだが、感想文を書くとなると何を書いてもネタバレになりそうなので書きづらいことこの上ない。


16.『護られなかった者たちへ』中山七里:著


護られなかった者たちへ | 中山 七里 |本 | 通販 | Amazonより引用:

「あなたにこの物語の犯人はわからない」―― 中山七里

仙台市の保健福祉事務所課長・三雲忠勝が、手足や口の自由を奪われた状態の餓死死体で発見された。
三雲は公私ともに人格者として知られ、怨恨が理由とは考えにくい。
一方、物盗りによる犯行の可能性も低く、捜査は暗礁に乗り上げる。
三雲の死体発見からさかのぼること数日、一人の模範囚が出所していた。
男は過去に起きたある出来事の関係者を追っている。男の目的は何か。
なぜ、三雲はこんな無残な殺され方をしたのか? 誰が被害者で、誰が加害者なのか。
本当に“護られるべき者”とは誰なのか
怒り、哀しみ、憤り、葛藤、正義……
万般の思いが交錯した先に導き出される切なすぎる真実――。

“どんでん返しの帝王”中山七里が挑む、骨太の社会派ヒューマン・ミステリー。

映画化されたが、映画を観る前に小説を読みたい派。
映画がAmazonプライムで観れるようになっていたので、急いで読んだ。
本当の犯人はいったい誰なのか。
それは読者に問われている。


17.『ヒトリシズカ』誉田哲也:著


ヒトリシズカ | 誉田 哲也 |本 | 通販 | Amazonより引用:

5つの殺人事件。果たして刑事は真実を見たのか?果たして女は幸せだったのか?今、注目を浴びる著者の連作警察小説。
木を見て森を見ず――。細部に注意しすぎ、肝心の全体を見失うことのたとえで、事件捜査において、最も避けなければならないことである。この小説に登場する刑事は皆、これを徹底し犯人を逮捕していく。だが、彼らは気づかなかった。その森が想像以上に大きく深いということに……。5つの殺人事件。果たして刑事は真実をみたのか?今、注目を浴びる著者の連作警察小説。

著者の本田哲也さんは本当に作風の幅が広い。
「硬」と「軟」の振れ幅が大きい上に、「陰」と「陽」の落差も大きい。
本作品は「硬」「陰」の作品群の中でもひっそりと咲く一輪の花、といったテイストだろうか。


18.『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』鈴木忠平:著


嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか | 鈴木 忠平 |本 | 通販 | Amazonより引用:

なぜ 語らないのか。
なぜ 俯いて歩くのか。
なぜ いつも独りなのか。
そしてなぜ 嫌われるのか――。

中日ドラゴンズで監督を務めた8年間、ペナントレースですべてAクラスに入り、日本シリーズには5度進出、2007年には日本一にも輝いた。それでもなぜ、落合博満はフロントや野球ファン、マスコミから厳しい目線を浴び続けたのか。秘密主義的な取材ルールを設け、マスコミには黙して語らず、そして日本シリーズで完全試合達成目前の投手を替える非情な采配……。そこに込められた深謀遠慮に影響を受け、真のプロフェッショナルへと変貌を遂げていった12人の男たちの証言から、異端の名将の実像に迫る。
「週刊文春」連載時より大反響の傑作ノンフィクション、遂に書籍化!

小説ではなくノンフィクション、と思っていたらそう簡単ではなかった。
とんでもなくドラマチックな小説、と言ってしまっても過言ではないくらいのノンフィクションだった。
そしてこれをAudibleで読書ならぬ読聴したのが正解だったかもしれない。
非常に雰囲気の良い語りで聴き入ってしまった。


19.『ブラックボックス』砂川文次:著


ブラックボックス | 砂川 文次 |本 | 通販 | Amazonより引用:

第166回芥川賞受賞作。

ずっと遠くに行きたかった。
今も行きたいと思っている。

自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。
自衛隊を辞め、いまは自転車メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。

昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。(本書より)

気鋭の実力派作家、新境地の傑作。

結論を端的に言えば「成長の物語」だと言っていいだろう。
自転車便で暮らしている主人公の内面に深く深く潜っていった先にある、どうしようもなさ。
決して鮮やかでもなく、爽快感があるわけでもないが、芥川賞に相応しい筆致でどん底まで深く抉りきった良作。


20.『火車』宮部みゆき:著


火車 (新潮文庫) | みゆき, 宮部 |本 | 通販 | Amazonより引用:

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。

Audibleで読聴。
あの三浦友和さんの朗読が非常に良い。
ちょっと古い小説ではあるので、違和感を感じる方もいるだろう。
ただ、ストーリーはいつの時代でも通じる普遍性を内包したテーマであり、全く色褪せない輝きを放っている。


21.『同志少女よ敵を撃て』逢坂冬馬:著


同志少女よ、敵を撃て | 逢坂 冬馬 |本 | 通販 | Amazonより引用:

独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵”とは?

こちらもAudibleで読聴。
ソビエト軍(今のロシア)とドイツ(ナチス時代)の戦争者であり、結構な長編だが、グイグイと引き込まれてしまう。
今という時代に読むべき読まれるべき傑作。


ひとまず、感想文として書いたのは21冊。
月2冊、には届かなかったが、これまでにないくらい多く読むことができた。
現在、読書中のものもあるし、年末年始の休みでいくつか読みたいものがあるので、また感想文を続けていきたい所存。

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