【MOVIE】『キャラクター』アイデンティティの依存、喪失と再生のサイコホラーサスペンス


心臓に悪い。
正直これほどまでに「ハラハラドキドキ」がストレートな感想になる作品は他にないだろう。
原作なしのオリジナル脚本ながら一瞬も飽きさせない展開と、絶妙に全部を見せないがしかし地上波テレビでは放映できそうにないギリギリのラインを攻めるグロテスク表現、文句の付けようがない豪華キャスティング、それらを見事なバランスで成立させた近年まれに見るエンターテイメントの傑作だ。

(5) 【6月11日公開】映画『キャラクター』予告 – YouTube

story|映画『キャラクター』公式サイトより引用:

漫画家として売れることを夢見る主人公・山城圭吾(菅田将暉)。高い画力があるにも関わらず、お人好しすぎる性格ゆえにリアルな悪役キャラクターを描くことができず、万年アシスタント生活を送っていた。ある日、師匠の依頼で「誰が見ても幸せそうな家」のスケッチに出かける山城。住宅街の中に不思議な魅力を感じる一軒家を見つけ、ふとしたことから中に足を踏み入れてしまう。そこで彼が目にしたのは、見るも無残な姿になり果てた4人家族……そして、彼らの前に佇む一人の男。

事件の第一発見者となった山城は、警察の取り調べに対して「犯人の顔は見ていない」と嘘をつく。
それどころか、自分だけが知っている犯人を基に殺人鬼の主人公“ダガー”を生み出し、サスペンス漫画「34(さんじゅうし)」を描き始める。
山城に欠けていた本物の【悪】を描いた漫画は異例の大ヒット。山城は売れっ子漫画家となり、
恋人の夏美(高畑充希)とも結婚。二人は誰が見ても順風満帆の生活を手に入れた。

しかし、まるで漫画「34」で描かれた物語を模したような、4人家族が次々と狙われる事件が続く。
刑事の清田俊介(小栗旬)は、あまりにも漫画の内容と事件が酷似していることを不審に思い、山城に目をつける。共に事件を追う真壁孝太(中村獅童)は、やや暴走しがちな清田を心配しつつも温かく見守るのだった。

絵は抜群に上手いが人物造形が不得手な漫画家アシスタントの山城圭吾(菅田将暉)が、ある一軒家で一家四人の殺害現場に出くわす。
そこで偶然にも犯人の顔を見てしまう。
その顔を漫画のキャラクターとして描き、大ヒット。
しかし、その漫画のストーリーをそっくりなぞるように、新たな殺人事件が次々に起こり・・・というストーリー。

非常にオリジナリティの高い設定とストーリーだけでなく、キャスティングも見事に嵌まっていた。
特に殺人鬼・両角(もろずみ)役のfukaseの演技は、演技とは思えないほど。
本当にこういう人なのかも、と思わせる魅力があった。
主人公役の菅田将暉をも凌ぐ高評価もうなずける。

モノを作る人間にとって、「手」を切られたり傷つけられるというのは考えたくないシーンであり、思わずぎゅっと力が入ってしまった。
現実とフィクションの狭間で油断していたらグイッと引き込まれてしまったような感覚。
まるで、漫画というフィクションを現実に実行してしまう「ダガー」のように。

ーーーネタバレ注意!ーーー
ネタバレ注意

person behind fog glass
Photo by Stefano Pollio on Unsplash

そして、創作の苦しみと孤独をひとりで抱えながら、それでも描かずにはいられない、だけどこれ以上殺人事件が起こるのは止めなければ、という葛藤を見事に演じきっていた菅田将暉の演技も非常に良かった。
主人公・山城圭吾(菅田将暉)は、幼少期から漫画家を目指していたのだろう。
絵を描くこと自体に喜びを感じ、夢中でかいているうちに周囲とのギャップに気づく。
どうやら自分は他の子たちと比べても絵が上手いらしい、と。
その自己肯定感を持ち続けたまま大人になり、気づけば漫画家を目指してアシスタントをやっていた、そんな役どころだろう。
おそらく世の多くの「絵が好きで周囲の中ではそこそこ上手い」奴は、だいたいそんなところだ。
そんな人間は掃いて捨てるほどいる。

だが、本作の魅力的なところは、絵は抜群に上手いが魅力的なキャラクターが描けない、という致命的な欠陥を持った「キャラクター」設定にある。
キャラクターを描く、ということは、人間を描くということだ。
人間を描けない山城圭吾は、心の奥底で暗い海のような深いコンプレックスを持っていたのではないだろうか。

周囲の奴らよりもちょっと絵が上手い、という自己肯定感は所詮メッキのようなものだ。
少しの刺激で、簡単に剥がれ落ちてしまう。
世の中にはもっと上には上がいる。
そうした現実を見てしまうと、もうその輝きは簡単には取り戻せないのだ。

魅力的なキャラクターを描くためには、周囲に目を向けて、と言われ、その言葉通りに街中で電車の中で観たままの人物スケッチをする。
山城圭吾には分かっていないのだ。
キャラクターを描くということが、どういうことなのかが。
人間の見た目を模写するのではなく、その人間の見えない部分を観るということを。
その人の、表情や服装、仕草からどういう仕事をしているのか、どういう家族構成なのか、どういう学生時代を過ごしてきたのかを想像する、ということを。
そうした、その人だけの背景をイメージしながら描く人物は、どこにでもいそうだけれど、深みのある魅力的な人物に見えるに違いない。

彼女・夏美(高畑充希)との結婚を考えると、漫画家として独り立ちする潮時を感じ、焦りがあったのだろう。
その葛藤は痛いほど分かる。
自分の才能を、実力を、どこまで信じ切れるか。
何度もトライしては弾かれ、を続けていれば心が折れる瞬間はいずれやってくる。
そんなとき、誰にも経験できない事件に遭遇してしまったら。
それは描かずにはいられないだろう。

殺人鬼・両角(fukase)には、やはり狂気を感じたし、気味が悪いという印象が強すぎて、どうにも内面にまで想像を巡らせることが難しいキャラクターだった。
なぜ次々と殺人を犯すのか、という疑問と無戸籍であることとは、何らかの関係があるのだろうが、どうにも気味が悪いために、それ以上を考えるのは困難だ。

ストーリーの中盤から終盤にかけて、まさか清田刑事(小栗旬)が殉職してしまうとは、思わなかった。
これには面食らった。
てっきり殉職するとしたら真壁刑事(中村獅童)だと思っていたのに。

一度自白で有罪となった辺見は最後まで逃亡中で、夏美(高畑充希)の買い物中に覗いているかのようなシーンがラストにあって、背筋が凍った。
最後の最後まで安堵できない作品だった。

(4) ACAね(ずっと真夜中でいいのに。) × Rin音 Prod by Yaffle 『Character』MV – YouTube


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