【BOOK】『女の国会』新川帆立:著 ただ女性であるというだけで

近年稀に見る選挙イヤーである2025年。夏には都議選の直後に参院選がある。そんなタイミングで読んだのが、第38回山本周五郎賞を受賞した新川帆立さんの『女の国会』。

最近の流行でもある「生きづらさ」という大きなテーマの中にあって、「女性」の「国会議員」の生きづらさを描くことで、社会のあらゆるところに蔓延る差別や偏見を、読者は否が応でも考えざるを得ない構造になっている。

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女の国会
新川 帆立(著)

女の国会 | 新川 帆立 |本 | 通販 | Amazonより引用:

選挙に弱い政治家は、
誰かの言いなりになるしかない。
だからーー。
強くなりたい。

国会のマドンナ“お嬢”が遺書を残し自殺した。
敵対する野党第一党の“憤慨おばさん”は死の真相を探りはじめる。
議員・秘書・記者の覚悟に心震える、政治 大逆転ミステリ!


野党第一党の高月馨は窮地に追い込まれた。
敵対関係にありつつも、ある法案については共闘関係にあった与党議員・朝沼侑子が自殺したのだ。
「自分の派閥のトップも説得できていなかったの? 法案を通すつもり、本当にあったの?」
死の前日の浅沼への叱責が彼女を追い詰めたのではないかと批判が集まり、謝罪と国対副委員長の辞任を迫られてしまう。
だが、長年ライバル関係を築いてきた高月には朝沼の死がどうも解せない。
朝沼の婚約者で政界のプリンス・三好顕太郎に直談判し、共に死の真相を調べることに。
女性議員(生成AIによるイメージ)

「国会のマドンナ」と呼ばれた与党女性議員・朝沼侑子が、遺書を残して自殺した。朝沼と対立していた野党第一党の女性議員・高月馨(通称・憤慨おばさん)は、これは単なる自殺ではないと直感し、真相を究明するため動く。

政策秘書の沢村、新聞社政治部の女性記者・和田山、主婦でありながら地方議員でもある間橋など、様々な女性の視点を通して、政界の仕組みや現実、女性の生きづらさが徐々に浮き彫りになっていく。

女性が主人公で政治を舞台とした小説といえば、幸田真音さんの『スケープゴート』がある。

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スケープゴート – 金融担当大臣・三崎皓子 (中公文庫 こ 53-4)
幸田 真音(著)

[link]Amazon.co.jp: スケープゴート : 幸田 真音: 本 https://amzn.to/4lATRaP

こちらは外資系証券会社に勤めた後、大学教授になった主人公が、時の首相に見出されて政界へ進出、あれよあれよと重要ポストにつき、ついに女性初の首相に・・・という物語。『女の国会』はそこまで都合よく進まない。

朝沼侑子はなぜ死んでしまったのか。本当に自殺なのか。他殺だとしたら誰が犯人なのか。

ミステリーの縦糸がいくつも張り巡らされ、ひとつが明るみになると、それまでの事実が鮮やかに転換していく。そしてラストの大転換。グイグイと物語世界へ引き込む筆力は流石だ。

女性議員(生成AIによるイメージ)

本作は、著者のジェンダー問題に対する強い憤りが感じられる。

最新(2025年)の「ジェンダーギャップ指数(Global Gender Gap Index)」ランキングは、世界経済フォーラム(WEF)が2025年6月に発表した「グローバル・ジェンダーギャップ・レポート2025」によると、1位は16年連続でアイスランド。2位フィンランド、3位ノルウェーと北欧諸国が上位を占める。

日本は148か国中118位(前年と同順位)。先進7カ国(G7)の中では引き続き最下位である。

[link]2025年のジェンダーギャップ指数 日本は世界118位 前年と同順位 | 社会保険労務士PSRネットワーク https://www.psrn.jp/topics/detail.php?id=36821

とはいえ、日本だけがおかしいわけではない。

世界全体の傾向としても、ジェンダーギャップ達成率の改善の進みは遅々として進まない。

2025年の世界全体のジェンダーギャップ達成率は68.8%で、前年より改善しているもののわずか0.3ポイントだ。

現在の進捗ペースでは完全な男女平等の達成まで123年かかると試算されているそうだ。

女性の差別を扱うと、多くは貧困とセットになっているものが多い印象がある。

桐野夏生さんの『燕は戻ってこない』では、地方出身の独身女性で、非正規労働者の主人公が代理母出産を請負うことで、命と尊厳と生に揺れ動く姿が描かれている。

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燕は戻ってこない (集英社文庫)
桐野 夏生(著)

[link]燕は戻ってこない | 桐野 夏生 |本 | 通販 | Amazon https://amzn.to/3TSHfzS

女性議員(生成AIによるイメージ)

だが、本作の登場人物は国会議員や政策秘書、新聞社の社員や地方議員など、いずれも貧困とはあまり縁がなさそうな、知識や教養があって、経済的にもそれほど困っていない層である。

それでも、政界の中では女性というだけで差別される。

純粋な差別、というとおかしな表現だが、経済的な理由でもなく、ただ女性であるということだけで差別されているという現実があるのだ。

著者は実際に永田町のウィークリーマンションを借り、2ヶ月にわたって取材を重ねたという。

[link]新川帆立さんが山本周五郎賞を受賞。「多くの人にとって“永田町”は遠い存在。でも〈それは女性ばかりが困っているよね〉は永田町も一緒だった」 新作『女の国会』は「女性差別を書きたい」という思いが出発点|芸能|婦人公論.jp https://fujinkoron.jp/articles/-/17003

綿密な取材を通して、リアルな議員の仕事と生活が見えてくる。

また、女性作家による女性議員の物語を通して読むと、男性が気付きにくい、女性の生きづらさ、といったものが見えてくる。

特に感じたのは、「女性らしさ」や性別役割への固定観念が男性側に根強くあるのではないか、ということだ。

「女性はこうあるべき」「女性らしく振る舞うべき」という無意識の期待が、私の中にも、現実に存在していることに気付かされた。

同時に、「男性はこうあるべき」というバイアスがあることにも気づくことができた。

気づけたこと自体は良かったことなのだが、では、どうすればこうした固定観念を捨て去ることができるのだろうか?

考えてみたものの、とても難しいということだけはわかった気がする。

バイアスに気づくことが出発点ではあるだろう。

その後、日々の行動を見直したり、多様な価値観や生き方を知り、尊重するしかないだろうか。

女性議員(生成AIによるイメージ)

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女の国会 (幻冬舎単行本)
新川帆立(著)
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女性議員は「変な女」なのか(小学館新書)
野田聖子(著), 辻元清美(著)
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神さまを待っている (文春文庫)
畑野 智美(著)
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燕は戻ってこない (集英社文庫)
桐野夏生(著)


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