【MOVIE】『シン仮面ライダー』感想 孤独と向き合い乗り越えていくヒーローの物語
まず、初見で面白い作品だ、ということはわかったのだが、なぜ面白いと感じたのかを説明しようとすると非常に難しい作品だ、ということにも気付かされた。
だが、本作は『シンウルトラマン』同様に、孤独なヒーローが自閉の世界から人を信じることで成長する物語だ。
まず、初見で面白い作品だ、ということはわかったのだが、なぜ面白いと感じたのかを説明しようとすると非常に難しい作品だ、ということにも気付かされた。
だが、本作は『シンウルトラマン』同様に、孤独なヒーローが自閉の世界から人を信じることで成長する物語だ。
人が人を裁く上で最も重いとされている「死刑」制度。
人が人の命を法に基づいて奪うということは、どういうことなのか、という俯瞰した立ち位置からの是非ではなく、当事者性を持って「死刑」という制度とどう向き合うのかを描いた超傑作。
「やられたらやり返す」ことが、本当に正しいのか。
確定死刑囚がもし冤罪だったら、誰が責任を取るのか。
死刑を執行する刑務官の、職務とはいえ人を殺したという罪悪感は、誰が担うべきなのか。
誰にも正解がない問題と向き合い、完璧なまでの構成力で紡がれた圧巻のストーリーと結末。
第47回(2001年度)江戸川乱歩賞受賞作品。
NHKの大河ドラマを超えるスケール感、地上波の枠を超えた規模感、豪華キャスト、常識破りの放送時間延長放映、盛り上がる考察などなど、社会現象と言ってもいいくらいに話題となった。
他のテレビドラマのレビューは別記事に書いたが、『VIVANT』だけ保留としていたので、ここで記しておきたい。
2023年10月開始ドラマの個人的に気になったドラマリストである。
今秋クールの注目は朝ドラ新作を含めて16本。
この秋はやや少なめかと思ったが、意外とあった。最終話まで見ることになるのは何本だろうか。
2023年7月開始ドラマの感想メモである。 先んじてドラマ開始前時点でリストアップしているが、 【TVドラマ】2023夏(7月〜開始)ドラマリスト – Crazy One – glad design blog – ここで …
「家庭裁判所調査官」と聞いて、どんな仕事なのかを説明できる人は、そう多くないだろう。
それだけ普段の生活には馴染みがない職業である。
本書はその家庭裁判所調査官になる、前段階の「調査官補」が主人公の連作短編集。
家庭裁判所調査官に採用されたばかりの新人・望月大地は2年間の養成過程研修で九州・福森家裁に配属される。
新人ではあるが実際の少年事件を担当するなかで、表面には見えてこない心の内側に、その人にしかわからない真実があることに気づく。
それは必ずしも良いことだけとは限らない。
相談者と彼らを取り巻く家族との抗いがたい葛藤と苦悩を共に考え、向き合うことで、望月大地自身もまた成長していく物語。
2023年の夏の甲子園大会(第105回全国高等学校野球選手権大会)は、慶應高校が大会2連覇をかけた仙台育英高校を破って107年ぶりの優勝を飾った。
アフターコロナの時代を象徴するように、声出し応援やブラスバンド演奏の解禁、熱中症対策や投球数制限、ベンチ入りメンバーの増員、5回終了時のクーリングタイムなど、話題も多く盛り上がった。
だが、この盛り上がりは遡ること3年前の「大会中止」があったことも大いに関係があると思う。
2020年5月20日、第102回全国高等学校野球選手権大会は、新型コロナウイルスの感染拡大により中止された。戦後では初の中止決定となった。
その中止となった大会の年に、高校3年生というタイミングを迎えた選手たちは、何を思い何を感じ何を考えたのだろうか。
本書は「あの夏」に、誰も経験したことがない事態に見舞われた「高校野球部員」たちの心の内に寄り添い、「正解」はいったい何だったのかを追い求める、迫真のスポーツドキュメンタリーである。
夏といえば高校野球。 息子の中学野球時代の親父たち数人で毎年「夏の甲子園優勝予想会」を催している。 大体いつも集計するのは私の係りだったりする(今年は代わってもらったが)ので、なんとかして集計作業をラクにしたいと考えてい …
同級生を殺害した容疑で14歳の息子・吉永翼が逮捕される。それなりに平和に暮らしていた日常から一転、加害少年の親となった主人公・吉永圭一は、ニュースで見る匿名の「少年A」ではなく、自身の息子と正面から向き合うことで、自分自身の心の奥底にある弱さと向き合うことになる、葛藤と決意の物語。
「十人十色」という言葉があるように、人は誰しも「色」を持っている。
その人がその人たる所以を色に例えると、みなそれぞれ違った色をしているはずである。
他の誰とも似ていない色を持つ者もいれば、なんだかとても近しい色をしている隣人と出会うこともあるだろう。
だが、日常生活に忙殺されて、違うはずの色が同じ色に見えてしまうような気持ちになるときもある。
変わり映えのしない生活。変化の無い日常。
世界がモノクロームに塗りつぶされて、味気の無い毎日に押しつぶされそうになったあの頃の自分を思い出してしまった。
なんとほろ苦い作品だろうか。
2023年7月開始ドラマのリストである。
気になったのは18本。
全部見れるわけがないのだが、最終話まで見ることになるのは何本だろうか。
4月期ドラマが完結したので鑑賞後のレビューを書いておく。
最終話まで追いかけたのは8作だった。#TV #TVドラマ
昭和の終わりの広島の、仁義なきヤクザ社会の抗争とそれを「必要悪」として生かさず殺さず手玉に取る悪徳刑事・大上。目的のためなら手段をいとわない強引な違法捜査に呆れながらも、次第に大上の刑事としての「孤高の矜持」に惹かれていく新米刑事・日岡。警察とは、男とは、命とは何か。何もかもが薄汚れていて、何もかもがまぶしく見えたあの時代。男と男の魂のぶつかり合いに心揺さぶられる前代未聞の警察小説。
首都直下型地震が発生し、首都東京が壊滅的なダメージを受けた平行世界の日本が舞台。
刑事を辞めていまはヤクザの用心棒をやっている巽丑寅は、不思議な黒人の少年・丈太と出会う。
震災を機に見かけられるようになった「震災ストリートチルドレン」を追ううちに、政治家、ヤクザ、謎のアナーキスト、あらゆる外国人労働者たちが入り乱れ、沈みゆく日本の中で雄叫びを上げる。
圧倒的筆致で描き出す「震災後の落ち行く日本」の姿がリアルに迫る傑作だ。
挫折を知った若き棋士がAI将棋ソフトを開発し、ライバルに再び挑む物語。
2015年に開催された「将棋電王戦FINAL・第5局」、実際のプロ棋士と将棋ソフトウェアによる戦いに着想を得て作られたが、ストーリーはオリジナルである。
AI=人工知能が人間を凌駕する、と言われて久しい。
chatGPTの劇的な流行で、より現実味を帯びている昨今、その歴史の転換点と言ってもいい将棋戦を極上のエンターテインメントとして魅せている。
主人公・清田英一の挫折と目覚め、人生を生きる喜びをつかみ取る中での苦悩と葛藤。
コンピューターや人工知能の専門用語、将棋の世界の厳しさなどに惑わされてはいけない。
これは人間の泥臭い汗の、匂い立つような青春の映画である。
なんという美しい物語なのだろうか。
数学の世界の純粋性と人が人を想う真っ直ぐな純粋性との完全なる調和。
森に代表される自然界の摂理と深遠さ。
自然と宇宙との運動に身を任せることで得られる圧倒的な世界への手がかりが脳内で煌めく瞬間の、なんと饒舌なることか。
「21世紀のガロア」とも呼ばれた数学の天才・三ツ矢瞭司と、その天才に嫉妬しながらも憧れ、愛したもう一人の数学の天才・熊沢勇一の、数理の世界でしかつながり合えなかったふたりの友情に胸が締め付けられる。
2003年第130回芥川賞受賞作。
当時最年少での芥川賞受賞ということで話題になった。
「青春期特有の視野の狭さ」と「自分の立ち位置を確認したくて仕方がない心理」つまりアイデンティティへの渇望と模索を描いた「裏の」青春群像劇、として読んだ。
「HOLLOW OUT(ホロウアウト)」とは、直訳すると「凹(くぼ)める」「決(さく)る」「抉(えぐ)る」という意味らしい。
ニュアンスとしては、ある一定の領域に対して中央付近だけを取り除く、欠落させる、といった感じだろうか。
東京一極集中が進む中、2020年二度目の東京オリンピックが開かれる直前、トラックに青酸ガスを仕掛ける事件が発生。
単なる嫌がらせでは収まらず、高速道路やトンネル、ガソリンスタンド、東京湾にかかる橋にまで事故が頻発。
さらに首都圏を直撃する台風によって、東京に物資が入らなくなる「ホロウアウト」状態に。
何でも揃う大都市の「当たり前」は名もなき人々の不断の努力によって支えられていたのだ。
現代に生きる我々の、明日にでも起きかねない”物流クライシス”の傑作。
血の繋がらない親子。
という設定だけを聞くと、お涙頂戴物のイメージが先行してしまうが、どうもそうでもない気がする。
2019年の本屋大賞を受賞。帯にも「著者会心の感動作」とある。
だが、私にはそういう感想はあまり沸かなかった。
どこにそんな感動ポイントがあったのか分からず、しばし悩んだほどである。
「それはジャーナルなのか?」
忙しさで目が回る毎日の中で、いかに芯に情熱を持ち続けることが出来るか、お前にはそれがあるのかと問われている気がした。
他紙に抜きつ抜かれつするスクープ合戦は、時として上司の命令に背かなければ得られないこともある。
中央新聞さいたま支局の関口豪太郎は連続少女連れ去り未遂事件を取材する中、七年前の連続幼女誘拐事件での誤報を思い出す。
単独犯で結審したが実はもうひとり共犯者がいるのではないかと気づいていたにも関わらず、報道しなかったことで次の事件が発生するのではないか、という焦りが連日の取材の疲れを倍加させる。
新聞記者と警察官の欺し欺される夜討ち朝駆けの取材攻防。
元新聞記者の著者ならではの圧倒的にリアルな現場のやり取りに隠された、犯人への怒りと組織の論理との間に揺れる葛藤が、読む者の胸を討つ。