

あなたがうれしいと わたしもうれしい そんなデザイン。
@gladdesign まだデザイナーやってる。毎日パワポおじさん。読書とB’zとAppleとCARPが好きなただの人。趣味は読書感想文。 ポートフォリオ→https://www.foriio.com/gladdesign
そのラベリングは正しいと言えるのか?
そんな問いを思い浮かべたのだが、観終わって、自分自身に自信がなくなってしまった。
他人の、ある一面だけを見て分かった気にならないように気をつけていても、見えていないことを理解することはとても難しい。
バイアスを持たずに、状況から事実だけを積み上げたつもりが、実は全く違う真相を持っていたりする。
事実がもしかしたら事実ではないかもしれない、と疑い始めたら、では何を信じればいいのだろうか?
戦争を経験した最後の世代が、後期高齢者となって現在の日本を憂い、革命を起こすべく立ち上がりテロを起こす。
そんな荒唐無稽な設定が、現実にあり得ないとは言い切れない、と思わせるほどのリアリズムで、精緻な筆致によって綴られている。
本書が刊行された2015年から10年経った2025年は、「団塊の世代」全員が後期高齢者になる。
戦後生まれの「団塊の世代」は戦争を経験していない先頭の世代である。
もう戦争を経験した世代が元気にテロを起こすことはないかもしれない。
だが、本作にはテロを起こすしかないと思えるほどの、ある感情が、今もなお日本を覆い尽くし、閉塞感を突き破るのではないかと問うているのだ。
犬は「人という愚かな種のために、神様だか仏様だかが遣わしてくれた生き物」だという。
本作は、ある一匹の「犬」を中心に、犬を取り巻く人間たちの物語が6遍の連作短編から構成されている。
視点人物は人間たちであるにも関わらず、その中心には常に同じ「犬」がいる、不思議な構成だ。
第163回直木三十五賞受賞作。