【TVドラマ】2026夏(7月開始)ドラマ感想文

2026年7月期のドラマは最終的に完走できたのは少なかった。

途中脱落が多く、少々残念な気持ちだ。

やはりリアリティラインと人物造形がしっかりしていないと、急激に観る力が失われていく。

そんな中でも最終話まで完走したドラマについて、感想をメモしておく。

興味関心: S
NHK総合 月 8:00 2026/06/29〜

風、薫る

出演:研ナオコ、見上愛、上坂樹里、水野美紀 | 脚本:吉澤智子

見上愛と上坂樹里のW主演で、看護師という職業の確立に大きく貢献した実在の人物をモチーフに、看護の世界に飛び込んだ少し型破りな二人のナースの姿を描く冒険物語。同じ看護婦養成所を卒業したりん(見上)と直美(上坂)は、患者や医師たちとの向き合い方に悩み、ぶつかり合いながらも、やがて“最強のバディ”となって世界を切り開いていく。


最終週のサブタイトルが、とてもいい。

「道をはずれた人から、いつも道は生まれた」

いつの時代も、誰も通ったことがない道は、道としては見えていない。
誰かが歩き、踏み固め、それに続く人が増えるから道になる。

看護という未知の分野を切り開いた、実在の人物である大関和と鈴木雅をモチーフにした2人の看護師(作中では当時の呼称・看護婦)を主人公とした「ダブルヒロイン」の作品。
『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる:著)を原案としている。

朝ドラは時に時代の要請によってか、生まれるべくして生まれる作品がある。
コロナ禍で多くの人は、医療の大切さを改めて感じたことだろう。「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる、社会生活を維持するために必須の業務を遂行する仕事に従事している人がいなければ、生きていくことができなかったのだ。

そうしたエッセンシャルワーカーの中でも、とりわけ命に関わる仕事であり、それでいて病気そのものを治療するわけではない「看護師(看護婦)」が誕生した経緯を、毎朝しみじみと観ることができた。

その始まりは「看病婦」と呼ばれ、当時は病人の面倒をみるなんて、と蔑みの対象となっていた。誰もがやりたがらないが、家族にとっては必要な仕事でもある。だから、家族以外の病人の面倒をみることは、金欲しさにやる場合がほとんどだったと描かれていた。

そのような逆風の中、信念を持って看護に取り組み、やがて「職業」のひとつとして確立していった、その「道」はどれほどの困難があったのか。
ドラマではそうした「困難」は意外なほどさらりと描かれ、静かなトーンをずっと維持し続けた。
だがかえってその静かなトーンが「道」を切り開く信念の強さを物語っていた。

主人公二人が、その生涯を閉じるまでは描かれなかったことも、朝ドラとしては珍しかったと思う。たいてい朝ドラでは、その主人公の一代記という側面が強く、主人公の人生を誕生から永眠までを描くパターンが多かった。
だが「風、薫る」では、2人の晩年(といってもちっとも老けなかったがw)までを描き、最終回では「現代の看護師」として2人そっくりの看護師が看護をしているシーンで幕を閉じた。
その看護師の名札は「ながみ」と「しばた」となっていた。
「ながみ」はりんが新潟にいた頃の高越女学校の長見久(ながみ ひさ:近藤華)と名字が一致する。
「しばた」はりんと直美が勤めていた帝都医大病院の用務員、柴田万作(しばた まんさく:飯尾和樹)と一致する。
ということは、彼らの子孫である、ということを示唆しているとも受け取れる。
切り開いた「道」は、次の世代につながったのである。

今、看護師の数が不足しているという。
厚生労働省の資料では、看護職員(看護師・准看護師・保健師・助産師など)の就業者数は、2016年:約166万人 → 2023年:約174.6万人と増えている。
だが、厚労省が推計した2025年の必要数は、働き方などの前提によって約188万~202万人。供給推計は約175万~182万人で、条件によっては約6万~27万人不足するという推計が出されているという。
看護職員そのものは増えている。しかし、それ以上に必要とされる場所・領域が増えており、地域・職場によって深刻な人手不足が生じている。増えているのに需要に追いつかないのだ。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001562994.pdf

2024年度の有効求人倍率を見ると、全職種の求人倍率が1.14倍に対して、看護師・准看護師の求人倍率は2.12倍。看護師を1人探している求職者に対して、約2.1人分の求人があるということだ。
全職種平均の約2倍ということは「病院などが人を採りたいのに十分集まらない」という意味での人手不足は、統計にもかなりはっきり表れていると言える。

りんと直美が立ち上げた「派出看護」は現代でいえば「訪問看護」にあたるだろう。その訪問看護の場合はどうか。
2026年7月の厚労省検討会資料では、領域別の求人倍率について、訪問看護ステーションは4.54倍とされている。病院、居住系介護サービス、その他の社会福祉施設でも1.5倍を超えているようだ。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000161127_00003.html

病院より訪問看護のほうが、さらに人材確保が難しいという構造が読み取れる。
だからこそ、今期の朝ドラ『風、薫る』は「時代に呼ばれた」ドラマだったのかもしれない。

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興味関心: S
フジテレビ 火 21:00 2026/07/07〜

さよならノワール

出演:小池栄子、北香那、岡山天音、荒川良々 | 脚本:井上由美子

小池栄子が主演を務める「犯罪被害者支援室」にスポットを当てた警察ヒューマンドラマ。元暴力団対策係の班長だった夏海(小池)は、ある事件を機に新設された被害者支援室に異動。そこへ、心理学者の絵梨子(北香那)が派遣職員として赴任してくる。2人は互いに足りない部分を補い合いながら、犯罪被害者に寄り添っていく。


小池栄子&北香那のW主演というのが最大の魅力であり、最大の訴求ポイントであった。
結果的に最終話までその魅力をフル活用した、というと言い過ぎだろうか。
警察内の犯罪被害者支援室という聞き慣れない組織を舞台に、元刑事と心理学者が犯罪被害者に寄り添う。このプロットだけでは、ややパンチが弱い気がする。
刑事もののドラマはこれまでありとあらゆる角度から描かれてきている。
新しさを求めると、やはりどうしてもニッチな部署の話になってしまう。
その舞台の弱さをどう補うのか。
ストーリーとキャスティングをどこまで丁寧に作り込めるかで、ドラマのリアリティラインが決まってくる。
そんな王道とも言える道を、丁寧に、粘り強く作りきった、というのが感触だ。

小池栄子が演じる黒木夏海は元刑事。冷静で仕事のできる印象だが、若干『新宿野戦病院』のヨウコと似た雰囲気でもある。
北香那演じる白石絵梨子は臨床心理士・いわゆる心理学者。人との距離感がうまくない、心理学者なのにコミュニケーション下手という面白いキャラクター。
サブキャストも豪華すぎる気がする。戸田恵子、荒川良々、岡山天音、眞島秀和、渡部篤郎、岡部たかし・・・。最強である。

脚本が井上由美子。『ギフト』『GOOD LUCK!!』『14才の母』『緊急取調室』などなど、実績も素晴らしい。
面白いドラマになるのは既定路線という他ないのだが、それほど話題になったかと言えば、必ずしもそうではなかった印象。
やはりフジテレビの宣伝不足、印象悪化に責任があると言ってもいいだろう。
こんなにも面白いドラマを、もっと見てもらう努力をすべきである。

ネガティブな面も。小池栄子演じる黒木は元刑事でありながら、被害者支援室へ移動となった、その経緯は最終話で少し触れられていたが、もっと前の話で示しても良かったのではないか、とも思った。
被害者支援という職務は、かなりホスピタリティの必要な職務であり、元刑事だった女性が、そう簡単に馴染めるものではないと感じられた。その理由が何かあるはずで、それを最後の方まで引っ張ってしまったがために、この人はなぜそこまで献身的に仕事ができるのか、という不思議さが先行してしまい、どうにも感情移入が難しかったのである。
こういう「人間造形」の弱さは、第1話からずっとあり、最終話でようやく少し揺り戻した感じがあった。
一方で北香那演じる白石(黒木と白石で真逆の色にしているところなど丁寧な作りを感じる)は心理学者でありながらコミュ障というキャラクターがばっちりとハマっており、なぜこの仕事に一生懸命になれるのかという動機がはっきりしており分かりやすかった。

また、連続テレビドラマの型としては「1話完結タイプ」であったが、あまりにもきれいに1話で完結していったためか、少々物足りなさも感じた。
1話ごとのストーリーの起承転結を進めつつ、物語全体を通した軸となるストーリーがやや弱く感じたのはそのためかもしれない。
連続ドラマ特有の「次週も観てもらう」という機能を持たせるには、ドラマ全体を通した一貫した「何か」がないと吸引力が不足してしまう気がする。
本作ではそれが、「突然姿を消した元上司の行方を追う」だけでは弱かった感があった。

ともあれ、実に面白いドラマであったし、続編もいくらでも作れそうな世界観なので、ぜひ2〜3年に1作ずつ続いて欲しい。

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興味関心: S
TBS 日 21:00 2026/07/26〜

VIVANT 第2シリーズ

出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼

2023年夏に放送され社会現象を巻き起こした話題作の続編。自衛隊の非公認部隊「別班」の諜報員である乃木憂助(堺雅人)が、“世界を巻き込む大きな渦”に巻き込まれていく姿を、2クールにわたって描く。主演の堺の他、阿部寛、二階堂ふみ、二宮和也、松坂桃李ら前作の主要キャスト陣も引き続き出演する。


期待値が非常に高かったがために、所々に「粗」が見えてしまい、ちょっとモヤモヤしながら、しかし非常に楽しんで見ることができた。

「粗」というのは、細かく色々とあるのだが、例えば、3年前の第1シーズンの頃にはほとんど登場することのなかった「AI」の存在がある。
第2シーズンでは「AIハヤト」が登場するのだが、アニメのキャラクターとして擬人化されたビジュアルがあったり、音声にアニメの有名声優を起用するなどして、話題作りとしてはいいのだろうが、どうにも見ていて「稚拙」な感じがしてしまったのだ。
子供にも広く楽しんでもらいたい、という製作陣の意図は分かるのだが、それにしてはストーリーはかなり複雑でややこしいので、目の肥えた大人向けとも考えられるだけに、その統率感に若干の疑問符がついたことは否めない。

それに、何でもかんでもAI任せになっていて、物語が思っていたほどには大きく進展していない。
拉致された別班員5名の救出は第2シーズン後半へ持ち越しとなり、説明ばかりの回もあった。
第1シーズンは日本とバルカ、モンゴルなどでのロケも多く、グローバルな冒険譚という雰囲気が存分にあったのだが、第2シーズン前半では日本、バルカ、ゴルドバ、イスラエルなど多数に渡るのだが、なぜかあまり冒険感は感じられない。
それはやはりAIまかせという点と、もう1つ、ブルーウォーカーのハッキング頼みが多用されているからだろう。
何でもかんでもハッキングして情報収集、AIで解析・作戦立案、が多いのだ。
パソコンなんてほとんど触らない、という人が見ればすごいなーと思われるのかもしれないが、日常的にPCを触っている人間が見たら、あんなキーボードの叩き方じゃ何にもできないだろうとか、そんなに簡単にハッキングなんてできないし、ということに気づくだろう。

「そんなつまらないことを言うくらいなら見なければいい」のは確かにその通り。
だけどつい見てしまう、そういう引力は変わらずある。
考察、というほどではないが、「誰々は実は味方なのではないか」「このシーンは実はこういう意味があるのではないか」「誰々は生きていて、誰々と過去にあるやり取りがあって・・・」など、裏読みしながら見ることができる、稀有な作品である。
後半も非常に楽しみである。

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興味関心: S
TBS 金 22:00 2026/07/10〜

Tシャツが乾くまで

出演:蒼井優、中島歩、高橋文哉、夏帆 | 脚本:生方美久

蒼井優が地上波連続ドラマ18年ぶりの主演を務めるオリジナルストーリー。とある事故に巻き込まれた2組の夫婦の“愛”と“秘密”の物語を、TBSで初の脚本執筆となる生方美久が描いていく。蒼井は出版社で結婚情報誌の編集担当として働く主人公・咲子を、素朴で優しく生真面目な咲子の夫・樹生を中島歩が演じる。


なんとも不思議な、形容し難いドラマだった。
「不倫」のドラマである、と宣伝されていたが、始まってみると「謎・秘密」「愛」「喪失と再生」「親子関係」「表と裏の顔」「本音と建前」「真実」「名前のない関係」「幸福」などなど、現代人がおよそ考えうる限りの人生における「壁」のようなものとの「距離感」の話でもあった。

物語は、序盤にバス事故で充が失踪、あずさが死亡するという衝撃的な展開。
その後、「第3金曜日の秘密」が大いなる「謎」として物語全体を牽引していく。

充とあずさは不倫関係だったのか。残された咲子と樹生は疑心暗鬼になりながら、生前の行動を振り返る。自分が知っているパートナーは、本当の姿だったのか。自分の知らないパートナーの姿はどんな人なのか。知ろうとすればするほど分からなくなっていく。

タイトル「Tシャツが乾くまで」は、最終話で回収されたが、それまでの経緯では、また違った意味も含まれていたように思う。
Tシャツが乾くまで、ということは、状態としては「まだ乾いていない」ということであり、つまり「濡れている」ということになる。
であればそれは「濡れ衣」だと、ネットで誰かが投稿していた。
確かに、男女が、決まって毎月第3金曜日に二人きり、コインランドリーであって話をする、という関係は、周りから見れば「男女の関係」だと見えるだろう。
それを「不倫関係」だと決めつけられると「濡れ衣」状態ではある。
だが、このドラマはそのステレオタイプな見方に、一石を投じる。

「男女間でも友情は成立する」し、「初対面だからこそ本音が言える」こともあるし、「自分から見た相手」の姿は、違う人から見ると全く違う姿になることもある。
これは、Tverオリジナルコンテンツの「1.5話」「3.5話」などでも、主要人物を取り巻く「サブキャラクター」だけで構成されたミニドラマでも描かれていた。むしろ本編よりももっとわかりやすく、人間の多面性を炙り出していた。
あらゆる角度から人間の表層と内面の「接続不良」を描写していくことで、現代人が思い悩む「コミュニケーション不全」の視点をずらしていく生方美久脚本の真骨頂でもあった。

また、驚くほど登場人物に共感できる人物がいないのも珍しいドラマであった。
にもかかわらず、続きの展開がどうなるのか、気になってしまい、気づけば毎週金曜夜22時にはテレビの前でリアタイスタンバイしている自分がいた。
脚本家自らが「共感して見るというよりは、こんな人もいるんだなあという人間観察として見てもらいたい」という趣旨の発言をされていたようだ。
なんとも不思議な、形容し難いドラマだと思ったのだった。

公式サイトを見る TVerで見る 予告編を見る (YouTube)
興味関心: A
NHK総合 月 22:45 2026/08/24〜

税金で買った本

出演:奥平大兼、西野七瀬、青木マッチョ、磯山さやか | 脚本:坂口理子

夜ドラ枠。ずいの、系山冏の同名漫画を奥平大兼主演でドラマ化。どこか満たされない心を抱えていた少年が、知る喜びに出会う姿を描くヒューマンコメディー。ヤンキー高校生・石平(奥平)は、ふとしたことから10年ぶりに訪れた図書館でアルバイトを始めることになり、仕事や職場での出会いを通して成長していく。


まだ終了していないので引き続き注視している。
コメディーはあまり観ないのだが、人物造形がしっかりしているので観ていても安心できる。
主人公:石平紀一を演じる奥平大兼の「間」が良い。

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