【BOOK】『わたしが消える』佐野広実:著 最後に残った記憶とは

自分の記憶が徐々に失われていくとしたら、いま、何をすべきだろうか。
これまでのすべての記憶がなくなってしまったら、自分は「生きている」と言えるのだろうか。
たしかに「生きていた」という証を、まだ残っている記憶の限りを残した男と、
それを追う主人公とその家族が最後に見たものとは何だったのか。
本作は、自己のアイデンティティと社会に巣くう不条理な力との狭間で、本当に大切にすべきことは何かを考えさせられた傑作である。