なかなか面白い試みだと思います。
このサイト『CrowdSpring』は、カリフォルニア州サンディエゴで開催中の『DEMOfall 2008』会議で発表された。基本的に参加自由で、デザイナー志望者や、副業としてデザインの仕事をしている人たちが、課題に応じて作品を提出するサイトだ。
たとえば、『ワイアード・マガジン』が2009年1月号の表紙をデザインしてくれる人を求める依頼書を掲載すると、世界の誰でも応募作品を提出することができる。ワイアードはその中から最も気に入った雑誌の表紙を選び、作品への対価をデザイナーに払う。
CrowdSpringは、デザインの仕事の新しいビジネスモデルを提示している。デザイン業界は昔から、競争が極めて激しい。業界に入り込むだけでもかなりの運が必要で、そこからキャリアを築き上げなければならない。
CrowdSpringの開発者たちは、このオープンなモデルが、より広範な革新を促進する一方で、才能はあるが無名のデザイナーに機会を提供できると考えている。
オンライン上で完結するフラットなコンペ、とでも言えばいいだろうか。
そもそも企業がほしいのは、優れたデザイン(の成果物)であり、デザイナーの経歴や経験やコミュニケーションスキルではない。はずだ。
そうであるならば、わざわざ大金を叩いて大手デザイン会社や大手広告代理店に頼まなくても、素晴らしいアイデアや技術を持ったデザイナーが世界中にいるのだから、オープンに募集すればいい。
このようなサービスが生まれた背景には欧米での文化があるのだろう。
ビジネスライク、と言っては言い過ぎかもしれないが、実利主義というか、ある種のアメリカンドリーム的、と言うか。
日本ではこういったサービスは広がりにくい、とも思う。
町章やイベントのシンボルマーク募集、というのはよく公募されているが、企業やサービスのロゴやパッケージ、広告などを公募するというのはなかなか無いことからも分かる通り、オープンなコンペは日本のビジネス界では文化的に馴染まないのではないだろうか。
個人的にはどんどん広がって欲しいのだが。
しかし、日本にもかつて、オンラインコンペを行うサイトがあった。
『IRIS(イリス)最高のデザインが見つかるサイト』という名称でワークスコーポレーションが主催していたように記憶している。
残念ながら現在は閉鎖されてしまっている。
IRISのビジネスモデルは、
(1)企業がコンペ用の発注書(オリエンテーション)をサイトに掲載する(IRIS側が作成していたのだろう)
(2)IRISに会員登録しているデザイナーはオリエン内容を見て、デザイン作業、サイトにデータをアップしてエントリー
(3)IRIS側が応募されたデザインデータを企業にプレゼン
(4)決定したデザインのデザイナーに報酬を支払う(仲介手数料として、企業側から10,000円、デザイナー側から6,000円徴収)
だいたいこんなものだったと思う。
私も会員登録し、1〜2回応募したことがあったが、残念ながら採用にはならなかった。
そのときの応募したデザインデータを今見ると、これは採用されないよな、という未熟なものだったりする(泣)
IRISのサービスで応募するには会員登録が必要だった。
しかもIRIS側での審査を通過しなければ、会員にはなれなかった。
いわゆるクローズドなサービスである。ここはCrowdSpringとは違うところだ。
これには、いくつか理由が想定される。(私が勝手に想定しているだけだが)
まず、誰でも応募可能にして、膨大な数のデザインアイデアが集まってしまうと、企業側にプレゼンする際にIRISの手間がかかりすぎる、という点。
さらに、ある程度のクオリティを持ったデザイナーに絞って、橋にも棒にもかからない輩のアイデアは排除し、企業側に安心してもらう、という点。
あとは、ワールドワイドとまではいかなくても、会員数を抑えなくても耐えられる程度のインフラ整備に、コストをかけられなかった、という点。
いちばんのネックは企業側に安心してもらう、という点で、ここをうまくやれば、ビジネスとして機能すると思うので、ぜひどこかのベンチャー企業さんが同様のサービスを展開してくれないかな、と思っている。
そして、それ以上に、企業側の意識も変わっていかないと、良質のデザインアイデアを調達することが今後困難になってゆくだろうと思われるのだが、どうも多くの企業さんは「デザイン」に関しての認識があまり無いように思う。
話をCrowdSpringに戻そう。
現在募集されているプロジェクトはhttp://www.crowdspring.com/find/projectsで確認できる。
アイコン、ロゴ、ウェブサイト、イラスト、様々な案件が募集されている。
右側には締め切り時刻のカウントダウンやエントリー数などがあり、ちょっとしたオークションの様相だ。
各案件ごとに応募(投稿)されたデザインはギャラリーで誰でも見ることができる。
それぞれのデザインを眺めるだけでも勉強になるかもしれない(もっともこれらは玉石混淆であって、玉ばかりではないが)。
発注者(buyer)からのオリエンはこんな感じ。
もちろん英語ですね(泣)
デザイナー(クリエイター)と発注者(buyer)との掲示板もある。
写真の例でいうと、白色がデザイナーからのコメントで、ピンクが発注者のコメント。
このように誰が、いつ、どの案件で、どのようなデザインを投稿したか、またそれに対して発注者はどうコメントしたのか、全てはオープンになっているのがスゴイところだ。
全てをオープンにすることで、デザイナーは自信のあるデザインを厳選するだろうし、発注者も企業としての姿勢を問われるのだ。
「コメントをしない」という姿勢はきっとネガティブに捉えられるだろう。
ちなみに、写真の例を機械翻訳したところ、発注者(buyer)からのコメントはけっこう手厳しい・・・。
「いい試みだが、我々には不要だ」とか。
デザイナー(クリエイター)はサイトに無料登録し、プロフィールやポートフォリオを載せることができる。
ワールドワイドに自身の宣伝ができるわけだ。(しかも無料で。審査なしで)
ポートフォリオはこんな感じで。
まとめ
日本で果敢にも挑戦したIRISは結果的に失敗に終わってしまった。
サイト閉鎖のアナウンスで「役目は終わった・・・・」云々があったが、むしろこれから必要となるサービスだったのではないか。
かといってCrowdSpringが日本で受け入れられるかと言うと、それもやや難しいと思う。
文化的な違いや言語の壁はやはり大きい。
しかし、それらをきちんと分析した上で、日本的なオープンコンペシステムを構築することは可能だと思うし、今後そういった方向に進まなければ、デザインという産業そのものが、薄く、低く、小さくなっていくと思わざるを得ない。
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