【TVドラマ】2024夏(7月開始)ドラマ鑑賞後感想メモ

2024夏(7月開始)ドラマ鑑賞後レビュー
気になるドラマは多かったものの、最後まで完走できたのは少なかった。

  1. 降り積もれ孤独な死よ
  2. 海のはじまり
  3. 新宿野戦病院
  4. 笑うマトリョーシカ


●日曜日

『降り積もれ孤独な死よ』

2024年7月7日スタート 毎週日曜夜10:30-11:25/日本テレビ系
公式サイト  TVer
降り積もれ孤独な死よ


井龍一原作、伊藤翔太作画の同名漫画を実写化したヒューマンサスペンス。成田凌演じる刑事・冴木仁が、13人の子供の白骨死体が見つかった通称・灰川邸事件発生から7年後、東京で起きた一人の少女の失踪事件に迫る。灰川邸事件の現場に残されていた謎のマークが再び姿を現し、錆びた歯車が動き出す。

本格的なサスペンスでリアリティラインもしっかりしていた。
初回から引き込まれる展開で飽きずに最後まで完走。
よくよく考えたらありえない設定(子どもを多数、ほぼ軟禁状態で屋敷に住まわせ、学校はどうしたのか、家政婦的な人物なしでどうやって10代前半から後半まで育てたのか・・・)でもあり、いくらなんでもそれはないだろ的展開もなくはなかったが、リズムよく脚本上の伏線回収が現れ、役者の丁寧な演技と演出とが高いレベルで融合していた。

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降り積もれ孤独な死よ(1) (イブニングコミックス)


●月曜日

『海のはじまり』

2024年7月1日スタート 毎週月曜夜9:00-9:54/フジテレビ系
公式サイト  TVer
海のはじまり


目黒蓮が月9初主演を務め、「silent」のチームが制作する“家族”の物語。月岡夏(目黒)は、大学時代に南雲水季と付き合っていたが、突然彼女から別れを切り出され別れる。7年後、水季が亡くなり葬式へ向かった夏は、海(泉谷星奈)という名の6歳の女の子と出会う。夏は、海が水季の子で、父親は自分だと知る。

noteにて毎話感想を投稿していた。
第1話| https://note.com/gladdesign/n/n1f21541fa3a8
第2話| https://note.com/gladdesign/n/nc0a1f8ac59d1
第3話| https://note.com/gladdesign/n/ncb8cc1583e55
第4話| https://note.com/gladdesign/n/n5dde65efad5b
第5話| https://note.com/gladdesign/n/n50dd597346f3
第6話| https://note.com/gladdesign/n/n35054db28ec3
第7話| https://note.com/gladdesign/n/nf9740bfdbc46
第8話| https://note.com/gladdesign/n/n32cd4cd97ff5
第9話| https://note.com/gladdesign/n/nebc56470d562
第10話|https://note.com/gladdesign/n/n809a9e8b65c0
第11話|https://note.com/gladdesign/n/n65b2f90a1232
第12話|https://note.com/gladdesign/n/nac9032827e37

後日、最終話後に全体を統括した感想文を書きたい。


●水曜日

『新宿野戦病院』

2024年7月3日スタート 毎週水曜夜10:00-10:54/フジテレビ系
公式サイト  TVer
新宿野戦病院

小池栄子と仲野太賀がW主演を務める、“緊急医療”エンターテインメント。ある日、新宿・歌舞伎町にたたずむ病院に、アメリカ国籍の元軍医、ヨウコ・ニシ・フリーマン(小池)が現れる。彼女は美容皮膚科医で、港区女子と派手に生きる高峰享(仲野)の生き方に変化をもたらしていく。脚本は宮藤官九郎が手掛ける。

多数の脚本を手掛けてきた宮藤官九郎氏の最高傑作と言ってもいいのではないだろうか。
個人的には代表作である『木更津キャッツアイ』はあまり好きではない(きっと地方出身者だから、心の奥底での共感が羞恥にまで昇華してしまうから)のだが、『タイガー&ドラゴン』が非常に良かったことからハマった。
宮藤官九郎は表と裏を同時に描き出すことで本質に問いかける稀有な作家である。
2024年1月期の『不適切にもほどがある』も腹を抱えて大笑いしながら見たのだが、本作『新宿野戦病院』は、ゆるいパートとシリアスなパートの落差が激しく、時にピリッと背筋が伸びるようなタイミングが何度もあった。
「救急医療」と「新宿歌舞伎町」を混ぜ合わせてグツグツと煮込んでエンターテイメントに仕立て上げる手腕は天才としか言いようがない。
ゆるいパートでは、まるで小劇場で演劇を観ているような、ややもするとテレビコント番組かと思うようなおもしろ展開が続く。
一方で、ピリつくシリアスパートでは救急病院のスピード感とその裏側で動くキャラクターたちの思惑とが、時にズレ、時に交わり、予想もつかない展開を見せる。

また、特筆すべきは、直近の「コロナ禍」を真正面から描いたことだろう。
2020年4月の緊急事態宣言から日本だけでなく、世界中で日常が奪われた。
そして2024年、今日本は何事もなかったかのように日常を取り戻している、ように見える。
かつての、ある種の異常な状態だった日本の、表と裏を同時に描くことによって、観るものの心のひだに揺さぶりをかけてくる。
何十億円もかけて配ったあのマスクはなんだったのか、飲食店に過度に要求したあのアクリル板は今どこに行ったのか、連日テレビで不安を煽っていたことで確実に不利益を被った人たちの憤りはどこにぶつければいいのか。
さらにドラマは現実を越え、未来の日本を映し出す。
新種のウイルスが発見され、根拠なく「歌舞伎町ウイルス」と呼称されてしまう。
行き過ぎた感染対策、マスクをしていないだけで罵倒される理不尽なヘイト行為など、コロナ禍で得た経験を活かせない日本を見せる。
周りに煽られてその気になってしまうのではなく、自分の頭で考え、自分の感覚で物事を判断しろよと、痛烈な批判を浴びせるストーリー。
新宿歌舞伎町という、日本の非日常の坩堝のような場所で、救急受入病院というこれまた非日常な舞台で、巻き起こる「表と裏」の交錯するドラマを描き切った怪作といえよう。

宮藤氏は朝ドラ『あまちゃん』で「東日本大震災」を描き、『不適切にもほどがある』で間接的にではあるが「阪神大震災」を描き、この度の『新宿野戦病院』で「異常だったコロナ禍」を描いた。
多くの作家が、エンタメになりにくい題材である災害や感染症が蔓延した社会を、逃げずに描いた、唯一無二の作家なのだ。

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新宿野戦病院


●金曜日

『笑うマトリョーシカ』

2024年6月28日スタート 毎週金曜夜10:00-10:54/TBS系
公式サイト  TVer
笑うマトリョーシカ


数々の受賞歴を持つ早見和真が2021年に発表した同名小説が原作。抜群の人気を誇る若き政治家と有能な秘書の得体の知れない不気味さに気付いた新聞記者が、彼らを取り巻く黒い闇に迫るヒューマン政治サスペンス。主人公の新聞記者・道上香苗を水川あさみ、謎多き秘書・鈴木俊哉を玉山鉄二、若き政治家・清家一郎を櫻井翔が演じる。

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笑うマトリョーシカ (文春文庫 は 60-1)

原作の良さを活かしつつ、原作にはないキャラクターも織り交ぜ、最後まで謎に満ちた展開で惹きつけられた。
懸念点だった櫻井翔の演技だが、役柄のキャラクターと同一視してしまうほど、ハマり役だったのではないだろうか。
国民的アイドルグループの1人だから主役以外はやらない、というスタンスを廃して臨んだことが功を奏したといえよう。
まさにマトリョーシカのように、外側を外してもまた内側には同じような顔がある。
どこまで行っても捉えどころのない、見るものによって違った表情に解釈できる顔は、国民的アイドルだった彼だからこその演技でもあった。


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