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【MOVIE】『さまよう刃』(東野圭吾原作)本当の正義とは何かを考えさせる問題作

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さまよう刃
さまよう刃

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(2015-08-01)
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ネタバレ注意!
(ネタバレされたくない方はこの先は読まないでください)

Amazonプライムビデオで観賞。
2009年の作品。

最愛の人が奪われたとき、あなたはどうしますか?人気作家・東野圭吾の150万部突破の同名ベストセラー小説の映画化。少年犯罪によって奪われた最愛の娘。犯人は少年法により保護され、遺族には永遠の絶望が残される。残酷な犯罪を続ける少年犯。彼らは‘少年法’に保護されている。復讐が何も解決しない虚しい行為だと分かっていながら、父親の長峰は自ら犯人を追う。そして、長峰を追う2人の刑事。綾部孝史と真野信一。被害者の絶望は、永遠に消えない。そして、少年たちは犯した罪と同等の刑を受けることはない。法律を守る、という建前の正義を優先する警察組織に、不条理さを感じる刑事たち。それぞれが苦悩しながら、この事件は予想外の結末を迎える。
by さまよう刃 | 動画 | Amazonビデオ

タイトルにある「刃」とは、登場人物それぞれが持つ「攻撃性」であり、それぞれが違う「攻撃の矛先」があるのかな、と考えた。
最愛の娘を殺された寺尾聰演じる父親の「長峰」は、犯人へ復讐という名の刃を向ける。
その長峰を追う警察、竹野内豊演じる「綾部孝史」は迷いながら、その「刃」をどこへ向ければよいのか苦悩する。
もう一人の刑事、伊東四朗演じる「真野信一」は、警察組織の持つ「刃」を法律を守る(という職務をまっとうする)ために振り続ける。

実際に、遺族の気持ち、長峰の心情に、どうしても感情移入してしまう。
子を持つ親になったからか。
私にも娘がいる。
まだ6歳児、まだまだ先の話だと思いつつ、もし万が一のことがあったらと思うだけで胸が締め付けられる。

もし、長峰と同じ立場だったらどうするだろうか?
きっと私は、長峰と同じかそれ以上の行動をとるだろう。
少年法があろうとなかろうと、犯人を「許す」あるいは「赦す」ことなど、到底出来ないだろう。
頭では分かっているが、そう割り切れるとは思わない。

あの衝撃のラストのように振る舞えるだろうか。
それも難しいと思う。

劇中、伊東四朗演じる真野刑事が言う、
「長峰には、未来なんかねえよ」という台詞。
つまり、残された遺族として、絶望しか残ってない、ということだ。

絶望しかない中、残った人生をどう使えというのか。
復習するしかないだろう。
たとえそれが無意味なものでも。
たとえそれが法を犯したものであっても。

やりきれない。
なぜ、法はこれほどまでに理不尽なのか。
なぜ、これほどまでに理不尽なことが起こるのか・・・・。

ラストのラスト、スタッフロール直前に、雪の中を進む足音だけが流れる演出があった。
ざっざっざっざっざっざっ・・・・

絶望だけが残った男の、執念の音のようだった。

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