
【MOVIE】『侍タイムスリッパー』(2023:日本)今を一所懸命に生きる愛すべき侍の心を忘れないために
最高に面白い!
笑いあり、涙あり、ハラハラドキドキあり、サプライズあり、感動あり、オチまでしっかり気が抜けない、こんな時代劇が見たかった、と思わずにはいられない。
単館上映から大ヒットしたのも大納得。
第48回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞という快挙を成し遂げた。
2025年3月23日には、興行収入10億円を突破したらしい。すごい。
「侍タイムスリッパー」予告編 – YouTube
主人公、会津藩士・高坂新左衛門がタイムスリップして現代の時代劇撮影所に来てしまうのだが、現代から最も遠い時代の人間であるにも関わらず、最も感情移入してしまい、見ているこちら側の誰もが応援したくなってしまう。
現代に生きる我々がすでに忘れ去ってしまった日本人としての心を、高坂新左衛門はとても大切にしている。
白くて美味しい塩むすびがあり、誰もが甘い美味しいお菓子を普通に食べることができる時代になった日本を喜ばしく感じながらも、会津藩の行末を知ってしまうことで、己が生きてきた時代は、命懸けで生きてきたのは一体なんだったのかとアイデンティティの維持に苦しむ姿も描かれている。
苦悩しながらも、時代劇の斬られ役として頑張り、どんどんと頭角を表していく。
その、今という時代を懸命に生きる姿は、現代に生きる我々がハッとさせられてしまうのである。
そんな愛すべきキャラクターたちの、時代劇を愛してやまないという気持ちがこれでもかと画面から溢れ出している。
映画「侍タイムスリッパー」は、「拳銃と目玉焼」(2014年)
「ごはん」(2017年)に続く未来映画社の劇場映画第三弾である。
幕末の侍があろうことか時代劇撮影所にタイムスリップ、
「斬られ役」として第二の人生に奮闘する姿を描く。
コメディでありながら人間ドラマ、
そして手に汗握るチャンバラ活劇でもある。
「自主映画で時代劇を撮る」と言う無謀。
コロナ下、資金集めもままならず諦めかけた監督に、
「脚本がオモロいから、なんとかしてやりたい」
と救いの手を差し伸べたのは他ならぬ東映京都撮影所だった。
10名たらずの自主映画のロケ隊が時代劇の本家、東映京都で撮影を敢行する前代未聞の事態。
半年に及ぶすったもんだの製作期間を経てなんとか映画は完成。
2023年10月京都国際映画祭で初披露された際、
客席からの大きな笑い声、
エンドロールでの自然発生的な万雷の拍手に関係者は胸を撫でおろしたのであった。
初号完成時の監督の銀行預貯金は7000円と少し。
「地獄を見た」と語った。侍タイムスリッパー | 公式サイトより引用:
ストーリー自体は、ありふれたプロットではある。
江戸時代などの侍が現代にタイムスリップして珍道中を起こす、というこれまで擦られまくったプロット。
ただ、タイムスリップしたのが京都の時代劇の撮影所だったことで、違和感なく現代に馴染んでしまうところが、これまでの「侍のタイムスリップもの」とは違うポイントだ。
中盤、あっと驚く展開になる中で、とあるセリフが心に残る。
一生懸命コツコツやっていれば、どこかで誰かが見ていてくれる。ほんまやなあ
時代劇が斜陽と言われ、テレビからも消えつつある時代に逆行して、インディーズで時代劇映画を撮るというギャンブルのようなトライも相まって、このセリフは多くのクリエイターに刺さったと思われる。
インディーズの低予算映画であること、京都撮影所が全面協力したこと、役者は時代劇のベテラン中のベテランが固めていることなど、ストーリー以外の話題もたくさんあるものの、なんといってもストーリーの面白さ、随所に散りばめられたリアリティで非常にうまくパッケージされている。
とにかく面白い。誰もが楽しめるエンタメ中のエンタメ映画である。
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