【TVドラマ】2023夏(7月開始)ドラマ鑑賞後感想メモ

to be continued sigange
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2023年7月開始ドラマの感想メモである。
先んじてドラマ開始前時点でリストアップしているが、

ここでは原則として最終話まで観たものをピックアップしており、途中離脱したものは除いてある。
一部、まだ最終話まで放映されていないものもある。


『転職の魔王様』


2023年7月17日(月)スタート 毎週月曜夜22:00-22:54/フジテレビ系
転職エージェントの毒舌敏腕キャリアアドバイザー・来栖(成田凌)が、求職者を辛辣な言葉で一刀両断しながらも、働く自信と希望を取り戻させる“転職”爽快エンターテインメント。大手広告代理店を退職した千晴(小芝風花)は、新しい職を探すため訪れた「シェパード・キャリア」で“転職の魔王様”こと来栖に出会う。

いわゆる「お仕事ドラマ」である。
お仕事ドラマにおいて最も大切なことは、その仕事の本質を描くことである。
「転職エージェント」の本質とは何か。
それは求職者の未来を共に考え、よりベターな条件を引き出し、求職者に確信させることではないだろうか。

エージェントの描かれ方も多様なキャラクターとして描かれている。
求職者に寄り添い励まし合う者や、より有利な条件を提示して背中をグイグイ押すタイプなど。
その中でも主人公・来栖は異彩を放っている。
エージェントは万能ではないとして、「どうすればいいのかなんて知りません。自分の人生なんだから、それくらい自分で決めてください」と時に冷徹に言い放つ。
だが根底には「自分の人生は自分で決めることができる」という強い信念を感じる。

エージェントとは「代理人」や「仲介者」と訳される。
あくまでも人生の主導権は本人が持ち、エージェントはその手助けを行うにすぎない。

多くの人にとって、転職は人生において重大なターニングポイントである。
その重要局面において、エージェント(=仲介者)は、側にいてくれる心強い味方なのだ。


『シッコウ!!〜犬と私と執行官〜』


2023年7月4日(火)スタート 毎週火曜夜21:00-21:54/テレビ朝日系
裁判所で出された結論が実現されない場合に、それを強制的に実行する執行官を支える執行補助者・吉野ひかり(伊藤沙莉)の活躍を描く痛快お仕事コメディー。上京し憧れのペット関連の仕事に就いたひかりだが、会社は倒産。職を失ったひかりは、執行官・小原樹(織田裕二)にある能力を買われ、執行補助者となる。

こちらも「お仕事ドラマ」である。
裁判所の「執行官」とその執行官を補助する「執行補助者」のバディものでもある。
お仕事ドラマの前提としての執行官の役割なども回ごとに丁寧に説明されつつ、主演二人(織田裕二・伊藤沙莉)の掛け合いを楽しめるドラマになっていた。

執行官は、裁判の決定に伴い、現状変更を行うという役割を担っている。
それは時として、冷徹にならざるを得ない時もあったり、相手に理解されない場面もある。
だがそれでも、法の秩序を守り、粛々と進める必要もある。
小原樹(織田裕二)は「人生をリスタートしてもらう。区切りをつけてもらう」仕事だと言う。
裁判沙汰になったということは何らかの間違いを犯した者がいるということだ。
その間違いを間違いと認め、再スタートを切るためにも、現状のままではいけないということを示すきっかけとして執行を執り行う。
人間のちょっと嫌な部分やちょっと情けない部分、醜い部分を見なければならない大変な仕事である。
「ギリギリの人間を相手に、落着をつける仕事」である。
それでも、明るく前向きになれる大人の味のあるドラマであった。

それにしても織田裕二と伊藤沙莉の演技は良かった。


『しずかちゃんとパパ』


2023年7月25日(火)スタート 毎週火曜夜22:00‐22:45、NHK総合ほか
耳が聞こえないろう者の父の耳代わり、口代わりをしてきた娘が結婚するまでの親離れ子離れしていく姿を描くホームコメディー。ろう者の父・純介を笑福亭鶴瓶、娘の静を吉岡里帆が演じる。また、静のアルバイト先に客として訪れる空気を読むことが苦手な道永圭一を中島裕翔が演じる。脚本は蛭田直美。


・しずかちゃんとパパ – NHK

両親がろう者(耳が聞こえない)で、その子どもは聞こえる者という設定は、意外と珍しい。
というより今までなかったかもしれない。(調べたわけではない)
この「聞こえない親をもつ聞こえる子ども」を「コーダ」と呼ぶそうだ。

コーダ (聴者) – Wikipediaより引用:

コーダCODA, Children of Deaf Adults)とは、きこえない・きこえにくいをもつ聞こえる子どものことを指す[1]

両親ともに、もしくはどちらか一方の親だけがろう者・難聴者でも、聞こえる子どもはコーダとされる。

タイトル『しずかちゃんとパパ』から、主人公は「しずかちゃん」(吉岡里帆)であり、ろう者の父親である「パパ」(笑福亭鶴瓶)との関係を描いているが、あくまでも焦点は「しずかちゃん」であるということがわかる。

コーダの中には、幼い頃から親のために通訳をしてきた人が圧倒的に多いのだろう。
小さい頃から「親を守る気持ちがあった」「周囲に親を馬鹿にするようなことはさせないと思っていた」という人が多く、ろう者である親とコーダとの間には、ある種独特の感情や関係性があるということが研究されている。

ドラマでも描かれているが、小さい頃から親の通訳をしていると、親を守るという意識が強くなる。
だが、自身が成長するにつれて、このままでいいのだろうかという葛藤が生まれる。
自分に好きな人ができて、やがて結婚を意識するようになると、自分の将来を思い描くようになる。
一方で、これまでやってきた親の通訳、親を守り続けなければならないという気持ちとせめぎ合う。

「パパ」は今まで自分の障害のせいで、娘が苦しんできたのではないかと気を揉む。
一方で、いつかは娘は嫁として家を出て行く。
その日のために、心の準備だけはしておこうと誓う。
もし、娘が結婚相手を連れて来たら、聴覚障害は遺伝する可能性があることをも、正直に話さなければならないと考える。
その覚悟は、どれほどの辛さがあっただろうか。
自分の障害のせいで、娘の幸せを邪魔してしまうのではないか。
そう考えるだけで、胸が張り裂けそうである。
その想いに、一生付き合わなければならないのだ。
ある意味、障害そのものよりも辛いのではないだろうか。

その父親としての愛情を、娘がしっかりと受け止め、自分自身の生き方を見つめて決断していくラストは、涙なくしては見ることができない。


『ハヤブサ消防団』


2023年7月13日(木)スタート 毎週木曜夜21:00-21:54/テレビ朝日系
池井戸潤の同名小説をドラマ化。中村倫也演じるミステリー小説家・三馬太郎の活躍を描くホラーミステリー。崖っぷちの作家・太郎は自信を失い、筆の進まない日々を過ごしていた。そんなある日、太郎は亡き父から相続した一軒家の様子を確認するために山あいの集落“ハヤブサ地区”を訪れ、そこに移住することを決める。

池井戸潤原作にはハズレがない。
ドラマは原作とは若干違う結末になっているようだが、謎が謎を呼ぶというサスペンスミステリーのお手本のような作品であった。
それぞれのキャラクターも魅力的で、ひとりひとりの行動・言動・考え方を見ても一切無理がなく、しっくりくる。
また、毎週毎週続きが気になって見てしまう、という連続テレビドラマのあるべき姿を体現していた。
ドラマの完成度という意味では、この夏最高だと思う。


『この素晴らしき世界』


2023年7月20日(木)スタート 毎週木曜夜22:00-22:54/フジテレビ系
平凡な主婦が突然姿を消した大女優になりすまして二重生活を送る姿を描く“なりすましコメディー”。夫と息子と暮らす主婦の浜岡妙子(若村麻由美)は、日常生活で妙な視線を感じるようになる。そんなある日、妙子の前に女優・若菜絹代(若村・2役)の事務所関係者である西條が現れ、妙子にある依頼をする。主題歌は小田和正が担当。


Tver【予告】

テレビ業界やタレント事務所の暗部を主テーマとしたドラマをテレビドラマとして放映する、という意味では、2023年冬クールの『エルピス —希望、あるいは災い—』にも通じるものがあったように感じた。

単純に顔が似ているだけで大女優の替え玉が務まるわけはないのだが、ひょっとしたら「作られたタレント」であれば可能性がないわけでもない、と思わせてくれるほどに、キャストの演技力で押し切った感もある。
だが、脚本が素晴らしく、ラストへの疾走感はグッとくるものがあった。

「平凡な主婦」も「幼い頃から女優」は「自分の人生を自分できちんと選択していない」者のメタファーだったのか。
そのどちらも演じる若村麻由美の演技からは、どちらにも退屈さがあり、どちらにもちょっとした楽しみがある、だからこそ「この素晴らしき世界」を生きていく、という人生讃歌が表現されている。


『彼女たちの犯罪』


2023年7月20日(木)スタート 毎週木曜夜23:59-0:54/日本テレビ系
横関大の同名小説を原作にしたスリリングサスペンス。大手アパレル企業の広報担当・繭美(深川麻衣)、専業主婦の由香里(前田敦子)、新人刑事の理子(石井杏奈)。立場も異なり、全く接点のなさそうな3人だったが、一人の女性の失踪事件をきっかけに、彼女たちの人生が思いもよらぬ方向へと進んでいく。


Tver【予告】

何の接点もなさそうな3人がどうやって繋がるのか、という掴みから、繋がったあとどうなるのか、なぜ(ホワイダニット)、どうやって(ハウダニット)が次々に展開されていくストーリー。
登場人物の誰にも共感できないのに、こんなにも面白いとは。

重要なキャラクターはほとんどが「女」である。
そして「女」は「他人のものを欲しがる」生き物として描かれているように思う。
自らが何かを作り上げていくのではなく、他人のものを奪うことで人生を生きようとする、その葛藤が主題そのものなのだろう。


『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』


2023年7月15日(土)スタート 毎週土曜夜22:00-22:54/日本テレビ系
「3年A組―今から皆さんは、人質です―」(2019年)を手掛けたプロデューサーと監督による“新時代”の学園ドラマ。卒業式の日、教師の九条(松岡茉優)は4階から突き落とされるが、「死にたくない!」と願った直後、1年前の始業式の日の教室に戻ってくる。九条は、真相を突き止めるために、生徒と本気で向き合っていく。


Tver【予告】

見応え十分であった。
当初は松岡茉優の教師役はイメージできなかったが、見事に演じ切った。
タイトル通り「最高の教師」とは、生徒と真剣に向き合い、時に寄り添い、時に突き放し、ただ困難に立ち向かう時には「なんでもする」と宣言できる教師だろう。
残念だったのはあれだけ悪ぶっていた生徒が、最も簡単に改心するのは、あまりにもファンタジーが過ぎると感じた。
大体、ダメなやつは何をやってもダメなので、教師が向き合ったくらいでは何も変わらないのが現実だ。

ただ、そこを差し引いても、このドラマが素晴らしかったのは、今までタブー視されてきたことや、当たり前だと思って深く考えずに過ごしてきた日常が、当たり前ではないことを繰り返し繰り返し伝えてきたことだ。
いじめられている側が逃げなきゃならないのはおかしいとか、一人になることは恥ずかしいことではないことなど、人生を窮屈に考える必要はないということを、何度も繰り返し伝えていたのだ。


『何曜日に生まれたの』


2023年8月6日(日)スタート 毎週日曜夜22:00-22:54/テレビ朝日系
飯豊まりえが主演を務め、「101回目のプロポーズ」(フジテレビ系)や「高校教師」(日本テレビ系)、「ひとつ屋根の下」(フジテレビ系)など数々の名作を手掛けた野島伸司が脚本を務めるオリジナル作品。ラブストーリーか、ミステリーか、人間ドラマか、社会派か。先が読めない予測不能の物語。


Tver【予告】

野島伸司脚本である。見ないという選択肢はないだろう。
大御所だからいつもの感じだろう、という予測を大きく裏切り、ミステリーなのか社会はドラマなのかラブストーリーなのか全くカテゴライズできない全く見たことがないストーリーが展開されている。
なんだかよくわからないけど先が気になってしまう、何か魔法をかけられているかのような、そんなドラマだ。


『CODE−願いの代償−』


2023年7月2日(日) スタート 毎週日曜夜22:30/日本テレビ系
台湾で話題を呼んだ「浮士鄹遊戲(英題:CODE)」を原作に、主演・坂口健太郎、共演・染谷将太で描くノンストップクライムサスペンス。不審な事故に巻き込まれ婚約者を亡くした刑事・二宮(坂口)の元に、どんな願いもかなえるという謎のアプリ「CODE」が届く。二宮はこのアプリを使って、婚約者の死の真相を追う。


Tver【予告】

作品の世界観や設定は非常に魅力的で、前半は疾走感のあるストーリーで良かったのだが、後半は少し間延びしたというか、尻すぼみ的にソフトランディングしてしまったように感じた。
特にオチはちょっと薄っぺらいなと思った。
台湾原作ということだが、原作に忠実に準えたのだろうか。
台湾では可能でも日本ではどう頑張っても「IT後進国」なので実現しそうにないストーリーになってしまい、リアリティという意味ではかけ離れ、もはやファンタジーになっていた。
もう少し何らか日本向けのオチでも良かったのではないか。


『VIVANT』

VIVANT
2023年7月16日(日)スタート 毎週日曜夜21:00-21:54/TBS系
堺雅人が主演を務め、阿部寛、二階堂ふみ、松坂桃李、役所広司が共演するアドベンチャードラマ。「華麗なる一族」(2007年)、「半沢直樹」シリーズ(2013年ほか)、「下町ロケット」シリーズ(2015年ほか)などのヒットドラマを世に送り出してきた福澤克雄が原作・演出を手掛けるオリジナル作品。


Tver【予告】

『VIVANT』については別途記事にしたい。