person in black pants and black shoes standing on brown wooden dock during daytime

【BOOK】『夜のピクニック』恩田陸:著 青春という虚構

高校の修学旅行の代わりの行事で、夜通しみんなで長距離を歩く「歩行祭」。
歩きながら、普段は言えないことを話し、普段は聞けないことを聞く。
高校最後の夏、あともう少しで大人になってしまう、そのギリギリ手前の、最後の花火が花開くような、切なさとやや暗さのある混沌と、汗も足の痛みも、なんなら鼻水だって混じった、青春の一夜の物語。

【MOVIE】『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』 純粋で孤独な天才の愛情

第二次世界大戦時、ドイツ軍の最強の暗号「エニグマ」を解読したイギリスの天才数学者アラン・チューリングをモデルとした実話がベースとなったヒューマンドラマ。 天才であるが故に純粋で、マイノリティであるが故に孤独な、そして愛に …

君のクイズ

【BOOK】『君のクイズ』小川哲:著 私は私のクイズを探そう

本作は、テレビ番組などでもよく観られる「競技クイズ」を舞台とした、ミステリー仕立ての物語である。 非常にシンプルな構造で、圧倒的なリーダビリティ(読みやすさ)で描かれている。 なによりも、「なぜ一文字も読まれていない問い …

【BOOK】『ルパンの消息』横山秀夫:著 あのときのあの人はここにいた

知らずに読んだのだが、あの『64』や『クライマーズハイ』や『半落ち』の横山秀夫氏の、本作がデビュー作だったとは。
ポンコツ高校生3人の甘酸っぱい恋や青春、警察組織内部のどろっとした上下関係と、15年前の府中三億円事件までもが絡んだ極上のミステリー。
横山氏お得意の昭和後期の埃っぽさと嘘くささとなんだかよくわからないけど熱くなってしまう切なさとが、幾重にも重なり合って彩られた読み応えのある一作だった。
終盤のどんでん返しに次ぐどんでん返しと、実はあのときのあの人が・・・という驚きで最後まで楽しませてくれる、文句なしの傑作だ。

【BOOK】『ある男』平野啓一郎:著 人は他者によって自分を愛せる生き物

人は自分のことがわからない。自分以外の、例えば鏡などを用いないと自分の顔を見ることもできない。
自分を知るためには他者が必要で、他者と過ごした時間の濃密さによって自分自身の幸せの深さも得られるのではないだろうか。
だからこそ、我々は物語というフィクションを信じることで生き続けて来れたのだろう。
人間存在の根源に迫る一冊。

【BOOK】『イクサガミ -天-』今村将吾:著 週刊少年ジャンプ的超エンタメ時代小説

本作を一言で言うならば、「週刊少年ジャンプ的超エンタメ時代小説」だ。 時代小説はほとんど読んだことがないが、テレビや映画での時代劇はよく見ているので、そのうち時代小説も楽しめるようになるかな、なんて思っていたタイミングだ …

一億円のさようなら

【BOOK】『一億円のさようなら』白石一文:著 置かれた場所で足掻くのが人生

人生いろいろ。夫婦、子供、会社、仕事、いろんなことが交わりながら、一人の人生を形作っている。 自分自身で決断して積極的に選択できることは、そう多くはない。 むしろ周りに合わせて、流されて、何となく選んでしまっている道の何 …

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【BOOK】『生存者ゼロ』安生正:著 これは現代の黙示録なのか

圧倒的なスケールで描くクライシス・バイオパニック・サスペンス。というとかなり軽いアクション映画のような表現だが、自然の猛威なのか、人類のエゴが引き起こした厄災か、想像を超えた事象に人類が巻き込まれる様を描いた大作だ。
もし、日本が、世界が、いや人類が滅びるとしたら、こういった原因は十分に考えられる、と妙に納得してしまう。
それほどまでの説得力があるロジックと圧倒的な状況描写で最後まで緊張感が張り詰める物語だ。

【謹賀新年】2023 卯(う)ーんと卯(う)なって、 卯(う)れしいことを、卯(う)みだす一年に。

謹賀新年。 卯(う)ーんと卯(う)なって、 卯(う)れしいことを、卯(う)みだす一年に。 取り立てて大きな目標とかも立てず、日々目の前のことを懸命にやっていけば、 自ずと道は開けてくるのではないかなと。 迷わず行けよ、行 …