カテゴリー: LIFE

【TVドラマ】2025春(4月開始)ドラマリスト

2025年4月開始ドラマの中で個人的に気になったドラマ絞りに絞っての15本のリストである。
2025年前期の朝ドラ『あんぱん』(今田美桜主演)を除くと、突出して目玉となりそうな作品がないという寂しいラインナップ。
強いて言えば『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』(多部未華子主演)が『私の家政婦なぎささん』のようなテイストに感じられ期待はしている。
あとは安定の日曜劇場が安定の阿部寛で臨む『キャスター』、瀕死のフジテレビの最後の徒花とならなければいいなと願う『続・続・最後から二番目の恋』(小泉今日子と中井貴一のダブル主演)に期待。

【MOVIE】『怪物』(2023:日本)他者との対話で己を知ること

そのラベリングは正しいと言えるのか?
そんな問いを思い浮かべたのだが、観終わって、自分自身に自信がなくなってしまった。
他人の、ある一面だけを見て分かった気にならないように気をつけていても、見えていないことを理解することはとても難しい。
バイアスを持たずに、状況から事実だけを積み上げたつもりが、実は全く違う真相を持っていたりする。
事実がもしかしたら事実ではないかもしれない、と疑い始めたら、では何を信じればいいのだろうか?

オールド・テロリスト

【BOOK】『オールド・テロリスト』村上龍:著 幸福よりも大切なのは今と明日を生き延びること

戦争を経験した最後の世代が、後期高齢者となって現在の日本を憂い、革命を起こすべく立ち上がりテロを起こす。
そんな荒唐無稽な設定が、現実にあり得ないとは言い切れない、と思わせるほどのリアリズムで、精緻な筆致によって綴られている。
本書が刊行された2015年から10年経った2025年は、「団塊の世代」全員が後期高齢者になる。
戦後生まれの「団塊の世代」は戦争を経験していない先頭の世代である。
もう戦争を経験した世代が元気にテロを起こすことはないかもしれない。
だが、本作にはテロを起こすしかないと思えるほどの、ある感情が、今もなお日本を覆い尽くし、閉塞感を突き破るのではないかと問うているのだ。

【BOOK】『少年と犬』馳星周:著 犬に人としての生き方を学ぶ

犬は「人という愚かな種のために、神様だか仏様だかが遣わしてくれた生き物」だという。
本作は、ある一匹の「犬」を中心に、犬を取り巻く人間たちの物語が6遍の連作短編から構成されている。
視点人物は人間たちであるにも関わらず、その中心には常に同じ「犬」がいる、不思議な構成だ。
第163回直木三十五賞受賞作。

有罪、とAIは告げた

【BOOK】『有罪、とAIは告げた』中山七里:著 想像と創造の間で

AIが人を裁く時代はもうすぐそこに来ているのかもしれない。
あらゆる業界・業種においてコスパ・タイパが叫ばれる昨今、chatGPTをはじめとした「生成AI」が現場に導入され始めている。
大量のデータから最適な組み合わせを提示するその能力から、仕事の効率化・迅速化が必要とされる場面では重宝されている。
もし、裁判官の業務をAIが代わりにできるのなら、大量の法律知識や過去の判例などを「深層学習」し、最適な「判決」を導き出せるかもしれない。
人が人を裁く時代から、AIが人を裁く時代になるのか。
一歩、いや、半歩先のリアルを描くリーガルサスペンス。

【BOOK】『スモールワールズ』一穂ミチ:著 思い通りにいかない人生を受け入れるために

ひとつひとつの物語は、小さな世界として独立して存在しつつ、それぞれの登場人物たちがわずかに交わったりすれ違ったりしながら、関係性を見せている。
それはまるで「六次の隔たり」を意図しているかのように。
人生には、本人たちの知らないところで、あの人とあの人とがつながっていたり、自分の行いが知らない誰かの人生に影響を与えていることも、想像するよりもずっと多くあるのかもしれない、と思わせられる。

5A73

【BOOK】『5A73』詠坂雄二:著 読みのない文字をどう読むか

複数の不審死案件にある共通点が見つかった。
どの屍体にも、とある漢字らしきものが描かれていたのだ。
その漢字らしきものとは『暃』と表示され、調べるとそれは「幽霊文字」と呼ばれる“読みも意味も無い”文字であった。
捜査している最中、次の不審死が起こる。
この幽霊文字は何を意味するのか、なぜ身体に描かれているのか。
事件の謎と文字の謎が混じり合う一瞬、あなたが見ている世界が反転する。

【BOOK】『道徳の時間』呉勝浩:著 ルールと道徳の違いは「あなた」の存在

「道徳」という言葉はおそらく誰しもが一度は聞いたことがある言葉だろう。
だが、説明しろと言われるとこれほど困難な言葉はない。
どのように説明しても合っているようなそうでもないような、曖昧で非常に手触りのない言葉でもある。
関西に程近い地方都市・鳴川市。
『道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?』有名陶芸家が死亡している現場に残された謎のメッセージ。
次々に起こる類似したイタズラとも思われる事件が続く中、ビデオジャーナリスト伏見は謎の女・越智冬菜からドキュメンタリー映画のカメラマンを依頼される。
それは過去に同じ鳴川市で起きた殺人事件を追う内容だったが、証言者を撮影していく中で現在の事件とのリンクに気づいていく・・・
謎が謎を呼ぶ展開に心揺さぶられるラストまでページを捲る手が止まらない、圧巻の第61回江戸川乱歩賞受賞作。

【BOOK】『告白』湊かなえ:著 全員が拗らせた結果としての悲劇とほんの少しの希望の光

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」
中学校の終業式のホームルームで女性教師が告白する。
登場人物全員がどこか歪んで拗らせている。
その歪みは、それぞれの主観で綴られた「独白(モノローグ)形式」の文章によって、より際立っている。
衝撃的なラストに息を飲む、第6回本屋大賞受賞作。

【BOOK】『正体』染井為人:著 この世の地獄の正体は

「正体」とは何の「正体」を指しているのか?
もちろん本作の主人公である「少年死刑囚」で「脱獄犯」鏑木慶一を指しているのだが、本作はいわゆる「フーダニット」のミステリーではない。
誰が犯人とされているのか、は読者には一旦示されている。
その上で、「正体」とは何を指しているのだろうか。
鏑木慶一は「なぜ」死刑となったのか、「なぜ」脱獄したのか。
もっと言えばタイトルを「正体」とした「理由」は何なのか?
実はいわゆる「ホワイダニット」の物語なのだ。

【TVドラマ】2024春(4月開始)ドラマ鑑賞後感想メモ

目玉があまりなさそうなクールだと思いきや、終わってみれば意外と豊作だったのではないかと思う。
完走したのは、

  1. アンチヒーロー
  2. 老害の人
  3. VRおじさんの初恋
  4. アンメット ある脳外科医の日記
  5. 天使の耳〜交通警察の夜
  6. Destiny
  7. 燕は戻ってこない(まだ最終回前)
  8. 約束 〜16年目の真実〜
  9. Believe−君にかける橋−
  10. 季節のない街
  11. 花咲舞が黙ってない(今田美桜主演)
  12. パーセント

の12本であった。

【BOOK】『店長がバカすぎて』早見和真:著 人生はコネクティング・ザ・ドッツ

主人公・谷原京子は、吉祥寺にある中規模書店「武蔵野書店」の文芸書コーナー担当の契約社員。
本が好きだからという理由もあって書店員になった。
山本猛という名前だけは勇ましいヘタレ店長とのトラブルの日々が続く中、誰も想像し得なかった事態に巻き込まれていく、ノンストップ書店エンターテイメント。
働くことに悩みはつきもの。そんな悩みをも一緒に笑い飛ばせる一冊。

【BOOK】『未必のマクベス』早瀬耕:著 ハードボイルドでピュアな究極の初恋小説

高校生の頃の淡い初恋の人の名前を、PCのパスワードにしている中年男性は、どれくらいいるだろうか。
実はそこそこの割合で存在しているのではないか、と私は密かに思っている。
初恋の人、とまではいかなくても、大切な人の名前や、子どもがいれば子供の名前をパスワードにしている人は、想像しているよりも多いのではないか。
人によって、仕事によってもちろん違いがあるが、一日に何度も入力することになるパスワードを、大切な人の名前にしているということは、常にその人を思い出し、イメージを反芻することになるはずだ。
ずっと忘れたくない、という思いがそこには透けて見える。
あなたのパスワードは誰の名前だろうか?

Catcher in the Ororo Field

【BOOK】『オロロ畑でつかまえて』 荻原浩:著 広告という嘘から見えた真実は

タイトルの『オロロ畑でつかまえて』はもちろん、サリンジャーの『ライ麦畑で捕まえて』のパロディーではあるが、内容面でそこまで寄せていったというものではないと思ったが、どうだろうか。
各章ごとに広告用語を配して、その内容とリンクされているような内容、と思わせつつ、ユーモアたっぷりのドタバタ劇が展開されていく。
まるで漫画やアニメのようなキャラクター設定で、テンポよく話が進む。
ボリューム的にも映像化されたら、2時間ドラマできっちりとオチがつくだろうと思わせる、このまとまりの良さも読んでいて気持ちが良い。

テスカトリポカ

【BOOK】『テスカトリポカ』佐藤究:著 人間の愚かさを映す鏡

圧倒的な暗黒の暴力と麻薬に堕ちた者の末路は神へ捧げられる“生贄”だった。
アステカの神話と現代をつなぐ命の刹那と永遠。生まれ、死ぬことでまた生まれる命のリレーと、際限のない欲望が渦巻く資本主義の成れの果てが描くのは、現代社会への鎮魂歌(レクイエム)なのか、もしくは希望(ホープ)なのか。
第34回山本周五郎賞受賞、第165回直木賞受賞のW受賞という快挙を達成した新次元のクライム小説。

【BOOK】『慈雨』柚月裕子:著 己に恥じない生き方を慈しむ雨

「慈雨」とは、万物をうるおし育てる雨。また、ひでりつづきのときに降るめぐみの雨のことをいう。
主人公・神場は警察官を定年退職し、妻と共にお遍路の旅に出る。
巡礼の最中、捜査中の幼女誘拐事件が16年前の自身も関わった事件と酷似していることに気づく。
過去の過ちと警察組織への忠誠心の狭間で葛藤する男の、真実への矜持が迸る傑作長編ミステリー。

【BOOK】『ルビンの壺が割れた』宿野かほる:著 狂気は冒頭から滲み出ていた

「ルビンの壺」とは、1915年ごろデンマークの心理学者エドガー・ルビンが考案した多義図形のことを指す。
白と黒のモノクロで構成された図案で、ちょうど影絵のように、向かい合う2人の顔のようにも見えるし、大きな壺のようにも見える。
人間の情報処理の研究分野である認知心理学では、あるひとまとまりの模様を「図」として認識し、それ以外の背景を「地」と呼ぶ。
人間の知覚は、あるものを見た時にひとまとまりのものであれば「図」として認識するが、同時のその背景は「地」としてしか認識できない。
認知が固まってしまうのだ。
ルビンの壺の絵を見た時、向かい合う2人の横顔と認識した人は、その周りを背景としてしか認識できない。
逆に、大きな壺だと認識した人は、その周りは背景としてしか認識できない。
どちらも間違いではないが、ふたつを「同時に」認識することは、人間にはできないのである。